【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その82】管理規約の落とし穴(その1原始規約)

分譲マンションを購入した当初の管理規約を「原始規約」と呼びます。分譲マンション業者がマンションの特性(単棟型、複合用途型、団地型等)や共用部分の建物・設備の内容等を反映させて、そのマンション固有の管理規約が設定されます。原始規約は区分所有建物の所有者全員が書面で合意するか、管理組合の集会(通常の管理規約では総会と称しますが、規約が設定される前であれば、区分所有法に基づき集会と称します。)において、組合員総数の4分の3以上で且つ議決権総数の4分の3以上の多数で設定します。

組合員の全員が、総会の議決に代えて書面で合意することで規約を設定することも可能です。マンションが出来た当初は全ての部屋を分譲マンション業者が保有しています。最初の一つ目の部屋を販売して所有権移転した段階で、マンション業者と最初のマンション購入者の二名が書面で合意することで管理規約は成立するのです。

全ての区分所有者から管理規約に関する承諾書を提出させる、又は一冊の管理規約を原本として、組合員全員の署名押印を求めるなどの方法でも、管理規約は有効に設定できます。

原始規約はマンションの売主が作成したのだからと言って、適正なものが作成されているとは限りません。作成者の技量不足による誤りや、不適切な判断に基づく欠陥のある管理規約は意外に多いものです。誤りや不適切な判断による欠陥ならまだしも、悪意に満ちた明らかな意図に基づく落とし穴が隠れている場合が多いのです。

今までに目にした不適切な原始管理規約の事例を上げてみます。

①未販売住戸の修繕積立金の支払いを分譲マンション業者に対して免除している。
②未販売住戸の管理費の支払いを分譲マンション業者は免除され、管理費の不足分のみを補填すれば足りるとしている。
③②の場合管理費支出を抑制するため、管理会社またはマンション分譲業者が必要と判断するレベルで管理内容を任意に変更し、実施できるとしている。
④管理規約に管理業務を委託する管理会社名が明記してある。(分譲マンション業者の子会社を記載)
⑤管理会社を変更するには、管理組合総会の普通決議(総会の出席組合員の過半数等)ではなく、規約の変更や共用部分の変更と同じレベルの重要事項決議(組合員総数の4分の3、議決権総数の4分の3を両方満たす必要がある)と規定して解約を困難にしている。
⑥役員の任期を1年の輪番制とする。
⑦役員は一年交代で留任できない。(又は留任は一度限りとする等)

①のマンション分譲業者の積立金の負担を免除すると、分譲業者自らがお客に説明している長期修繕計画に食い違いが生じてしまいます。

②③の管理内容を軽減して管理費を浮かせて不足分についてのみ負担するなどは、管理に関する重要事項説明違反で、マンション管理適正化法違反且つ詐欺行為と言ってもいいでしょう。「管理員は常駐管理」とうたいながら、「入居者が少ないから半日勤務です。」など許されると思っているのでしょうか。

①②のような売主に都合のいい取り決めですが、宅地建物取引業法上は、「消費者に不利になることでも買主に説明をして了解を取り付けていれば有効」とされるのです。膨大な契約関係書面に次々押印する中に、このとんでもない不利益な事項も紛れ込んでしまっているのです。マンションの購入は符合契約といって、売主が提示する(消費者にとって不利な内容も含めて)全ての条件をそのまま承諾しないと成立しません。要は「気に入らなかったら買ってもらわなくて結構。」という押しつけ契約です。

④⑤のいずれの場合でも管理委託契約を解除するには総会の通常決議では不可です。組合員総数と議決権総数の4分の3の多数の合意を要求しているのです。管理会社の解約を何としても阻止したい意図が見え見えです。管理委託契約解除の要件を④の場合は管理規約の変更、⑤の場合は重要事項決議事項に紛れ込ませているあざとい手口ですね。
標準管理規約と照らしても明らかに不当な規約ではないかと指摘してみてください。彼らは「管理規約も管理会社も当初全員一致で設定したものです。それを変更するのですから重要事項決議を求めるのは当然です。」と平然と回答するでしょう。
私は、本来管理会社に重大な背信行為や信用不安などがあれば、これらを管理委託契約解除の十分条件と規定し、理事長権限で解約を申し入れても良いと思います。総会に付議するよりも緊急避難的に管理組合の資産を保全し、不利益の拡大を防ぐことを優先すべき事態では機動的な経営判断が必要な局面もあるのではと思うのです。管理組合の資金を着服し、経営破綻した管理会社などは一刻も早く契約を解除すべきです。異論をはさむ余地はないでしょう。

⑥⑦は管理組合運営を寸断し組合員の主体的な管理組合運営の芽を摘み、管理会社に敵対的な役員が現れてもすぐに退場させるための仕組みです。以前このコラムで愚民政策というテーマで取り上げた通りです。
https://schoolformkk.com/kanri-shuzen_column/255/

次回は管理規約改定の落とし穴についてご説明したいと思います。

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。

匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

4 thoughts to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その82】管理規約の落とし穴(その1原始規約)”

  1.  形式上は有効で、実質上無効の典型例ですね。 
     完全自主管理と全面委託管理を経験し、マンション暮らし50年ですから、おしゃることはよくわかります。

  2.  セミナーでも話が出ました、が今の各種契約は「情報の非対称性」が極端に出ています。
     管理組合は「シロウト」の集団で、管理会社は「プロ」ですから、管理組合が契約で勝てるわけはありません。 販売時の原始管理規約には、管理費収納口座として管理会社の口座へ自動振り込みにて支払うよう書いてあります。 販売前に管理会社を変更することなど、管理組合(そもそも理事会が発足していない)ができるはずはありません。
     

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