かけるべきところでお金をかける。
大人として、とても大切なことです。
個人的には、商売道具であるパソコン、思い出のための旅行費用、趣味であるサーフギア、身の回りのビジネスギアには、少しだけお金をかけているつもりです。
一方で何から何まで思うまま注ぎ込めば、よほど裕福な人以外は、貯えが底をついてしまうわけです。
貯えが無くなるならまだ良い方で、身の丈を越えたお金の使い方をしたばかりに借金を抱える人も多く、マンションの管理費等を滞納して、他の区分所有者に迷惑をかける人がいることも事実です。
私は20年以上、お金に関わる仕事をしてきたので、お金の大切さと怖さを知っています。
さて、今宵、お金にまつわる話__
肝心な場面で金の使い方を誤り、地獄を見た男の話をしましょう。
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伊豆、多々戸浜。
ミラーボールのように、初夏の太陽を反射させる水面、白い砂。
サーフスポットでもある、美しい海岸、多々戸浜。
この浜でのサーフィンを楽しみにしている、私たちおっさんサーフチーム。今年もその季節がやってきました。
波打ち際まで歩き、変わらぬ透明な水とキマった波を確認した私たちは、「ここで入ろう」と即決し、砂浜に面した駐車場を振り返りました。
真っ赤なシボレー
否が応でも目に飛び込む、私たちの数台横。圧倒的な存在感を示す、ど派手な高級車。
雲ひとつない青に、あまりにも対照的な赤は、真夏を思わせる太陽を、これでもかというほど跳ね返しておりました。
金の十字架を思わせるエンブレムの前には、ビーチベッドに横たわる美人の姿が。
それはまるで、高級クルーザーから地中海でも眺めてるかのごとく、悠々とくつろいでおりました。
海、自然、そして人類の幸せを愛する、真面目なサーファーである私たち。
「えー女やなぁ…」
などという感情ははおくびにも出さず、淡々と海に入る準備をすすめます。
しばらくすると、ふわり、何かが__
シャボン玉?
首を伸ばし、飛んでくる先を確かめると、ビーチベッドの美人__
子供と遊ぶお父さん以外で、いい大人がシャボン玉を飛ばす姿を初めて見ましたが、美人の口から次々と生まれる七色の球体は、しがない国産車と、汚いおっさん集団に当たっては消え、まるで「邪魔だから、あっちいってよ」と何度も囁かれているようでした。
(後編へつづく)