【切っても切れないマンションと保険の話しその14】マンションの「管理組合」と「自治会」

マンションの区分所有者であれば、必ず（100％）管理組合に加入することになります。
その一方で、周辺地域の自治会に参加することも求められる場合があります。「管理組合」と「自治会」は違うのか考えてみましょう。

管理組合は、区分所有者で構成された団体で、マンションの建物とその敷地及び付属施設を維持管理することが目的です。マンションという共有財産を管理する管理団体といえます。管理組合には業務内容、構成員、入会条件の明確な規定があり、区分所有者であれば自動的に加入するものです。

自治会は、地域住民同士の親睦を図り、地域生活の維持向上を目指して活動します。さらに言えば、自治会は基本的に地域コミュニティから生まれた任意団体です。自治会への加入や脱退は自由で、参加を強制されることはありません。

両者は、「目的」も「性格」もまったく異なる団体です。

国交省が公表している「マンション標準管理規約」では、2016年度の「マンション標準管理規約」において、「コミュニティ条項」が削除されました。

この「コミュニティ条項」の削除に関し、当時はマンション管理業界の関係者を中心に、「マンション内でのコミュニティ形成や地域住民との関係構築を無くすということはおかしい。」と削除に対し、大きな反発が起こりました。

それでは、コミュニティ条項とは何でしょうか

居住者間のコミュニティ形成は、日常的トラブルの未然防止、大規模修繕工事等の円滑な実施などに役立つので、管理組合にとっても必要な義務
管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費など、地域コミュニティにも配慮した管理組合活動にかかるお金は管理費からの支出が認められる

というものでした。

なぜ、コミュニティ条項は削除されたのか、そのことについては、国交省が2016年度「マンション標準管理規約（単棟型）」の「コメント」で次の解説しています。

管理組合の業務として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成（に要する費用）」を掲げていたが、これはマンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提としたものだった
しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大される懸念がある
とりわけ自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブルが生じている実態もあった

これらが当該条項を削除するに至った経緯というわけです。

管理組合と自治会の関わり方を考えてみましょう。
わかりやすく言うと、管理組合と自治会の活動を安易に混同することは望ましくないということです。

管理組合がマンション内でコミュニティ形成にかかわる活動をすることはあり得ます。しかし、強制加入である管理組合で行う活動と、自由意志で入る自治会での活動の区別があいまいになると、自治会に参加した費用を管理費でまかなうケースなどが出てくる恐れがあります。自治会の集まりへの参加は義務だと勘違いする居住者も現れるかもしれません。管理組合に支払う管理費と同時に、自治会費を支払うやり方が確立してしまうのは問題があります。

以上から、自治会費は強制的に支払わされるべきものではありませんから、これら課題の整理をする必要があるのです。

今後、管理組合と自治会は明確な役割分担をすることが重要です。また、管理費と自治会費それぞれから支払うものは何なのかも明確に区分けして、あいまいな項目を無くすことです。

誤解しないでくださいね。
これらは、管理組合に入っていれば、自治会には加入しなくていい、ということではありません。

マンション居住者でも、地域のコミュニティに参加し、住みやすい環境づくりに一役買うことは可能ですから、今まで以上に積極的にコミュニティ活動を進めることが必要になってくると思っています。

マンション住民の高齢化、防災対策や防災時の避難活動・被災時の対応、空き家問題、管理費滞納、資産価値の維持向上、建物の長寿命化のための適正な維持修繕、住民どおしの感情的な各種トラブル解決 etc…

これらの課題は、マンション内のコミュニティ形成や、周辺地域との関係構築や連携が無ければ解決できないものばかりです。

IT化､AIが開発され、人がいらなくなる時代が来ると言われています。しかし一方で、マンションや地域住民が円滑に暮らしていくためには、人と人が協力し合い、人の力でしか解決できない課題が山積しているのです。

安全・安心な暮らしのために、コミュニティ（人と人がかかわっていくこと）を大切にしてください！