C技研への書面に押印しないK山理事長に、妻は返信のメールを送る。
K山さんへの不信感が、これ以上増さないことを願っています。
交渉が遅れることになれば、K山理事長の責任、それを住民にもばらしてやるとの、ほとんど脅迫にも近い内容だ。このメールを送り付けられ、理事長も、少し腰が引けてきたようだ。
意地でも理事長印を押したくないが、さりとて「交渉を遅らせている」と後ろ指を指されたくもないらしい。
対する妻たちの返事は、
以上のことを踏まえた上で、臨時理事会の開催を要求したいと思います。その席で書面を可決すれば、理事長印押印に関して、問題は無くなります。
ちなみに、僕らのマンションの規約では、臨時理事会の開催については「半数の理事が申し出た場合は、理事長は速やかに理事会を開かなければいけない」となっている。ただ問題は、いつまでに開かなければいけないかとの期限が明記されていないことだ。果たせるかな、K山理事長は、次のように返信してきたそうだ。
臨時理事会の招集についてヤツが調べたところでは、「理事長が招集しない場合は規約違反になるので、理事長が欠席であっても、理事の過半数が出席という形で、議案の上程・可決は可能」とのことだったらしいが、それに対しても、
との返事だったらしい。「理屈には理屈で」との対応だ。K山理事長のことは完全になめきっていたヤツらだったが、ここに至ってのこの逆襲に、完全に戦闘モードにはいる。
住民の皆さんにも、オブザーバーとしてのご参加を呼び掛けるつもりです。住民の意見を尊重し、早期の問題解決にご協力いただけましたら幸いです。
K山理事長とのやり取りに、すっかり時間をとられてしまったが、会合の翌日の月曜日に押印済の文書を投函できれば、週末の通常理事会までに、C技研が回答を作成して送ってくることは、ぎりぎり可能だろう。また仮に回答が来なかったとしても、それはそれで、C技研の姿勢として次の対応を話し合うことができる。
「ほんっと、K山さんのせいで、時間が無駄になった!」
というよりも、妻がいらない一文を付け加えさえしなければ、もっとスムーズに勧められたような気もするが…。
そしてK山理事長への連絡に加え、マンションの住民たちに宛てて、妻たちは、招集をかける文書をポスティングする。
明日24日の夜20時より、エントランスホールで臨時理事会を開きたいと思います。
T技研が約束した文書が未だ届かないので、こちらから督促の書面を送ろうと準備してきましたが、手続きが停滞しています。規約に基づき、私達三人の理事で臨時理事会の開催を請求し、明日20時より開催することにしました。住民の方々にもオブザーバーとしてご参加いただければ幸いです。
「手続きの停滞」とは、もちろんK山理事長の押印拒否のことだ。文書には明記されていないものの、女たちの口コミで、この事実は既に広められている。
(photo by photoAC)