【マンション管理士ふくろうの実践コラム】「再任を妨げない」とは

役員の任期に関して標準管理規約36条では「役員の任期は〇年とする。ただし、再任を妨げない」としています。

これと同内容の規約を持つ管理組合の役員から下記の様な相談を頂きました。
それは、理事5名と監事1名の役員構成で役員は1年任期の輪番制としていたが、今年の総会に上程する役員選任議案には現役員の理事5名のうち理事長以下3名の理事が規約の“再任を妨げない”を根拠に来期も役員に就任することとし、残り3名のみを従来通りの輪番該当者を新役員候補とすると理事会決議したが、これで問題はないのかというものでした。

従来より、この「再任を妨げない」にはいくつかの解釈があることは承知していました。

①「再任されることを禁止するものではない。」・・多数の解釈(と思われる)

②「再任希望を妨げられることはない。」   ・・一部の解釈

個人的には①の解釈であれば、わざわざこの表現を入れる必要性がないのではないかと思いつつも、②の解釈はムリ、と考えていましたので実際に管理組合の現場で②の解釈を基に役員に再任されようとしてることに驚かされました。

私が②の解釈はムリと考えていたのは、

  • もし、役員全員が再任意思を示せば、総会での再任決議選任を得ることなく、半永久的にそのメンバーのみで理事会を運営し、他の組合員の役員就任を
    不可能にしてしまいますので、現役員を最初に選任した総会でもそのような可能性までを考慮してた上で選任したとは到底思えない。
  • 再任決議も不要となれば、そもそも管理規約で定められた役員の総会選任や役員の任期が形骸化されてしまう。
  • 株式会社法人の役員の任期において「任期○年とし、再任を妨げない」という規定を見ますが、これは明らかに①の意味である。

等の理由からです。

しかし、現実に理事会で②の解釈がなされた場合に①の解釈が正しくて②の解釈は間違っていると言えるのでしょうか。

 

 

残念ながら、マンション管理の専門家であっても①の解釈の方が適切ではないかとのアドバイスはできても、どちらだ正しいとの裁定はできません。
その裁定を下せるのは結局は裁判所しかありません。

そうしますと、結局は理事会が判断した解釈を総会の場で承認するのか、しないのかにかかってきますが、実際問題としては再任を希望する役員と出来るだけ役員にはなりたくない一般組合員の利害が一致してしまうのではないかという事も含め、よほど組合員の意識が高くないと普通決議事項である役員選任議案を否決するのは難しいのではないかと思ってしまいます。

この相談事案の総会結果は不明ですが、もしこの3名が希望通り再任されたのであれば多くの組合員から評価をされるような良い組合運営をされることを願うばかりです。
今回の事案の教訓としては「管理規約には解釈によって内容が大きく変わるような文言を記載してはいけない、誰もが同じ解釈ができる文言にしなければならない」ということだと思います。

一度、自分のマンションの規約で分かりにくいところを専門家を交えて皆様で検討してみたらいかがでしょうか。

(photo by photoAC)

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