【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その107】新型コロナウイルスその2 Web理事会は法的に有効に成立するか

非常事態宣言下でZoomやSkypeなどのWeb会議ソフトを使った理事会を行う管理組合が急増しています。Web理事会は適法に有効なのでしょうか。

1.会社法における取締役会のWeb会議の取り扱い
会社法施行規則101条3項1号かっこ書で、取締役会議事録における取締役の開催場所の記載について、「当該場所に存しない取締役(中略)が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。」との規定があります。

2.一般社団法人及び一般財団法人の理事会におけるWeb会議の取り扱い
内閣府及び都道府県の総合情報サイト「公益法人Information」から引用します。
「遠方に所在する等の理由により現に理事会の開催場所に赴くことが出来ない理事が当該理事会に参加するための方策として、Web会議、テレビ会議、電話会議などの方法によることも可能です。」
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第15条(理事会の議事録)3項1号かっこ書にも、先に示した会社法施行規則と全く同じ規定がみられます。

1.2.いずれの場合も、電話、Web会議ソフトを使用して取締役会や理事会の開催場所以外からの参加を行った場合はその旨を議事録に記載すれば足りるとしています。

3.管理組合の理事会におけるWeb会議の位置づけ
マンションの管理組合は「権利能力なき社団」と呼ばれます。
権利能力なき社団とは、法人として登記する要件は満たしていないが、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいいます。

管理組合は、会社法や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が適用されるものではありませんが、団体の運営に関する先の法令規定は参考となるでしょう。

区分所有法は管理組合に理事会を置くことを前提としていません。理事会は区分所有法に基づいて設定された管理規約の中で規定している、管理組合が任意に設ける組織です。

理事会をWeb会議ソフトで開催することに関しては、国土交通省の標準管理規約第53条(理事会の会議及び議事)に関するコメントに以下の記述があります。
「理事会に出席できない理事について、インターネット技術によるテレビ 会議等での理事会参加や議決権行使を認める旨を、規約において定めることも考えられる。」
国土交通省はWeb理事会を有効に開催するのであれば管理規約を変更するよう求めているようです。

4.Web理事会は無効か
Web理事会が管理規約に規定されていない管理組合において、正式な理事会を開催しない場合でも理事会決定事項が有効とされるための方策を以下のとおり提案します。
(1)Web理事会開催後に正式な理事会でWeb理事会での決定事項を追認する。
(2)理事会は開かず、(又はWeb理事会開催後に)理事全員が書面によって理事会として決すべき事項に合意する。
(3)Web理事会の開催を理事全員が合意の上、Web理事会を開催し、理事会の規定通りの招集方法、成立要件、議決要件で決議を行う。
Web理事会の開催を「標準管理規約コメントに反し無効」と主張する理事が存在すれば、いずれにしても後日に問題となる可能性は否定できません。
(1)の場合はWeb理事会で決定した事項が後の正式な理事会で覆った場合のリスクがあることは留意しなければなりません。

5.緊急避難的な措置は認められないのか
大規模災害などの緊急事態で理事会開催が困難な場合、災害復旧や被害拡大防止などの事案を直ちに総会に諮りたい場合、Web理事会により総会議案を審議したり、場合によっては理事会が開催できないとして理事長が理事会を経ず総会を招集したりするケースはどうでしょうか。理事会の総会議案審議の手順に瑕疵があるとして、決議された総会での決定事項が無効となるのでしょうか。
組合員が「総会決議は無効」との確認を求める訴えを提起したとしても、実質的な訴えの利益は無いとして却下される可能性が高いのではないでしょうか。管理組合の最高意思決定機関の総会で承認された議案と同じ議案が、理事会を手順通り再度やり直したからと言って、再び開催された総会で覆るとは考えにくいからです。
規定通りの慎重な手順を踏むことにこだわらず、管理組合の被害やリスクの拡大を防ぐことを優先した理事長(理事会)の判断を、組合員が支持されることを期待いたします。

国土交通省には、時代の声に速やかに対応され、標準管理規約にWeb理事会の規定を盛り込まれるよう望みます。

(photo by photoAC)

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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