【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その104】管理組合と管理会社との契約方式の検討(その1)

これまで本コラムで、管理会社の管理組合との対等な関係の構築について意見を述べてまいりました。改めて管理会社との管理委託契約締結において検討すべき事項を整理してお示ししたいと思います。

Ⅰ.現在の契約方式の課題

1.基幹事務とその他の管理事務の包括契約となっている

マンション管理適正化法で、マンション管理会社業者として国に登録している者が行う業務を「基幹事務」と規定しています。基幹事務には以下の3項目が掲げられており、これら3項目すべてを行う場合に限り、国に登録しているマンション管理業社に委託する必要があるのです。

  1. 会計の収入、支出の調定
  2. 出納
  3. マンションの維持・修繕に関する企画、実施の調整

基幹事務に該当しない業務は「その他の管理事務」と言います。清掃業務、管理員業務、設備管理業務、警備業務などがこれにあたります。ほとんどのマンション管理業者は、その他の管理事務と基幹事務を包括して受託し、売り上げと利益の最大化を図っています。(当然の商行為です。)

基幹事務を新規に受託する場合及び、契約内容を変更する場合は、組合員を対象に重要事項説明会を開催しなくてはなりません。同一の契約内容で再契約する場合であっても、全体理事長に対して重要事項説明を行い、重要事項説明書を交付しなくてはなりません。

問題は、その他の管理事務を基幹事務と包括して契約しているため、その他の管理事務の軽微な変更であっても、重要事項説明会を開催しなければならないということです。当然管理組合としても、そのような説明を受けたからには、理事会単独の判断で契約の変更を行うわけにもゆかず、総会を開催して決定することとなるのです。

管理会社に委託している定期清掃の頻度を増やし、応分の金額を加算して発注するとか、植栽の業者を管理組合が独自に発注して管理会社の業務から外すなどは全て重要事項説明会を要すると共に、総会決議事項となってしまいます。

重要事項説明会にも総会開催には、管理組合と管理会社双方に多大な労力がかかります。資料作成、会場確保、資料送達と委任状等の回収などの費用負担も少なくありません。

 

 

2.短期の有期契約となっている

管理委託契約の期間は1年とする管理会社がほとんどです。2年とする管理会社もありますが、3年以上の契約を結ぶところはほとんどありません。近年の物価の上昇を懸念し、長期契約に応じない管理会社が増えております。

管理の見直しを行い、せっかく適正な管理委託料で管理会社に発注できたとしても、短期間で契約が見直となれば、そのたびに価格の再交渉を行わざるを得ません。かつては許されていた自動更新条項による契約の更新はマンション管理適正化法により禁止されているのです。このため、短期間での値上げリスクを常に管理組合は負っているのです。

管理会社からの委託料改定の要請に対して、合理的に検討を行うならば、都度管理会社選定の作業を繰り返さなくてはならならないかもしれません。

3.管理会社は利益相反を免れない

管理会社は基幹事務を委任契約により実施しています。定められた仕様に基づき依頼人である管理組合の利益となるよう、善良なる管理者の注意義務を負って業務を行うのです。ところが、管理受託業務以外の、損害保険契約、小修繕工事、保険対象となる事故や災害の復旧、追加で受託するその他の管理事務などの発注先を決定する場合に、管理会社は可能な限り自社又は自社の推薦企業に受注させるべく行動します。

仮に自社が代理店を行っていない損保会社が、自社が代理店をしている保険会社よりも、管理組合に有利な保険商品を扱っていることを承知していたとしても、これを管理組合に告知する事はありません。

自社の推薦企業というのは、自社にリベートをもたらしてくれる企業と同義です。
管理会社の推薦企業によらず、管理会社自らこれらの仕事を受注したいと考える場合は当然他社からの相見積もりを取ることはありません。あえて相見積もりを提出するよう求めたとしても、話の通じた業者に頼んで自社に都合の良い見積もりを提出させるに過ぎません。

(その2へつづく)

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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