【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その109】新型コロナウイルスその4 Web理事会の有効性に関する検証

新型コロナウイルスの影響で、インターネットを利用したWeb理事会で行う事例が増えています。その理事会で審議された総会議案を基に総会を開催した場合、理事会は有効に開催されたと言えるのでしょうか。新型コロナウイルスその2でWeb会議を有効とするための方策を端的に示しましたが、今回はもう少し踏み込んで考えてみましょう。

区分所有法では集会(総会)の規定はありますが、理事会の規定はなく、管理組合が規約で任意に設定した組織が理事会です。理事会の運用は規約事項なのです。
国土交通省の標準管理規約の本件に関するコメントを引用します。

「理事会に出席できない理事について、インターネット技術によるテレビ会議等での理事会参加や議決権行使を認める旨を、規約において定めることも考えられる。」

Web会議を理事会が採用する旨規約変更すれば、有効との判断です。とはいえアドバイス的な記述でもあり、「規約変更が無い場合は無効」とまで断じているのかは不明です。

特定の団体や組織において、全員の合意(書面による合意の意思表示を含む)がある場合は、当該合意は成立とするのが、団体法理の原則です。
規約で理事会の定足数を定め(例えば理事の過半数が出席)、議決要件を定める(例えば出席理事の過半数で可決)規約の規定は、先の原則の例外手順をみとめた規定と考えられます。

上記のことから、多くの管理規約で総会議案を理事会議決事項としていますが、Web会議で意見交換した結果、総会議案として上程すると合意した内容を書面にして、理事全員の署名が揃えば、理事会の議決方法とは異なる手順ではあったとしても、この合意を基に、理事長が総会を招集して良いと考えます。

総会議案以外の理事会で審議されていることの多くは、規約、細則に特段の定めがない限り、区分所有法の管理者の権限が理事長個人に委ねられていると考えられることから、理事会は理事長が他の理事の意見を参考に意思決定するためのヒアリングの場と考えることも可能です。(理事会運営の慣例からすれば専横に過ぎるのではと思われるかもしれませんが、緊急事態宣言下で、管理組合の意思決定を柔軟に行い、管理者の職務を円滑に執行したいとの視点です。)

Web会議で理事同士が意見交換し、理事長が先決できることは専決する。総会議案など規約や細則に規定のある理事会の議決を要する事項は、後日正式な理事会の席で追認したり、理事全員の合意を書面で取り付けたりといった柔軟な運営に期待したいと思います。

また、規約にWeb会議の規定がなくても、現職理事全員がWeb会議で理事会を開催することを合意(書面合意を含む)した場合は、理事会をWebで開催し、これを有効として、総会議案を含め理事会の決議が必要とされる事項を審議するとすることも有効と考えます。この場合、Web会議による理事会の立要件及び議決要件は、実会議によるものと同じでよいでしょう。

総会の電磁的方法による決議に関する規定においては、区分所有法に以下の規定があります。
「(書面又は電磁的方法による決議)
第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。」

書面で総会議案を決議することに関し、組合員全員があらかじめ承諾していれば、議決権行使書のみを使って賛否を決議できるのです。(議決要件は議案により異なります。)

区分所有法に定める総会の書面又は電磁的方法による決議に準じて、理事全員の合意でWeb会議を有効な理事会の手法と認めてよいのではないでしょうか。区分所有法には定めの無い、規約でのみ規定する理事会の開催要領は、当事者全員の合意があれば、柔軟に運用してよいと思うのです。Webによる理事会を理事全員の合意のもとに開催し、理事会として審議決定されたことが、後日組合員から否定されるなど考え難いことです。

大和ライフネクストのマンションみらい価値研究所の久保依子氏は「マンション標準管理規約改正への提言 ~Web会議システムを用いた理事会の開催について~」のなかで、Web会議と電磁的方法による理事会は、性格が異なるとして、以下の提案をしています。
「今後も同様な事態が発生した場合に備えて、標準管理規約を下記のように改正されるように望みたい。

【改正案】 電磁的方法が利用可能な場合に、第三号を追加
三 会議の参加者同士の電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法で あって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、会議参加者が一堂に会するのと同等の相互に十分な議論ができるもの」

区分所有法及び標準管理規約が早急に改定され、総会においても理事会においても、希望者にはWeb会議ソフトによる会議参加を認めたり(実会議とWeb会議のハイブリット会議)、実会議は開かずWeb会議ソフトのみを使った会議がいずれも有効となるよう望みます。

(photo by photoAC)

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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