【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その106】新型コロナウイルスその1 マンション内で感染者が発生した場合、管理組合は何をすべきか

新型コロナウイルスに居住者が感染した場合にはどうするのかと、理事会へ様々な心配の声が寄せられています。積極的な対応を望む意見もあれば、慎重な行動を望む意見もあります。それぞれの主張を紹介して皆さんの参考にしていただければと思います。

【声:その1】
マンション内の感染者が発生したら、理事長へ届け出義務を課し、理事長は住民にマンション内の感染者の存在を周知し、警告を促すべきではないか。

【積極意見】
住民の命を優先すべき。プライバシー保護は一定の制限を受けざるを得ない。

【慎重意見】
管理組合に区分所有者の健康状態に対して介入する権利はあるのか。感染住戸を秘匿して感染者存在の事実のみ告知すれば、不安は増大し、感染住戸探しが始まるだろう。住戸が特定されて情報が拡散すれば、プライバシーの侵害で管理組合に責任が生じるのではないか。
管理組合に届け出があった場合、理事会はこれを秘匿するのか、組合員に感染事実だけでも告知するのか。告知する場合も掲示や書面配布は避けたい。SNSでの画像拡散で、マンションの資産価値低下が心配だ。

【声:その2】
自宅隔離の感染世帯、特に独居や高齢世帯に対する管理組合のサポートが必要ではないか。

【積極意見】
管理組合に支援を申し出られた場合、日々の安否確認(体温、体調についての声がけ)、買い物など用向きの代行などをボランティアで支援すべきではないか。

【慎重意見】
管理組合は共有財産(敷地、共用部分)の維持保全のための団体であり、日常生活の支援に関して踏み込むべきではないのでは。

【声:その3】
マンション内で感染者が発生した場合、共用部分の一斉消毒を徹底して行うべきではないか。

【積極意見】
専門業者による共用部分の消毒を直ちに実施すべきである。定期的に実施してほしい。

【消極意見】
特定多数、不特定多数の出入りするマンション共用部分を継続的に衛生に保つことは困難。業者により消毒しても、人が触れれば汚染リスクとなる。とはいえ日常的にアルコール又は塩素を使って、オートロックの操作盤、出入り口ドア、メールコーナー、管理室カウンター、屋内階段、ゴミステーション、機械駐車場の操作盤、エレベーター内部等、手指の触れる部分をこまめに拭くなどの消毒を行うことは管理会社に要請したい。

【声:その4】
共用部分の動線を、感染者とその他の入居者に分けて管理すべきではないか。

【積極意見】
エレベーターが複数あれば非感染者専用、感染者とその家族専用のエレベーターを指定し、明示すべきではないか。エレベーターが1台しかない場合は家族以外の乗り合いを禁止し、誰か先に乗っているエレベーターには乗らないルールを運用してはどうか。
マンションの出入り口が複数あるが、感染者とその家族専用の出入り口を指定してはどうか。感染住戸のメールボックスに届いた郵便物等は管理員が受け渡してはどうか。

【慎重意見】
動線やエレベーターを指定するとなれば感染者とその家族の特定につながる。共用部分の使用制限など私権を制限する強制力は管理組合には無いのではないか。良かれと思って取った行動が、結果的に子供のいじめや、職場や託児所などにおいて風評被害に発展するおそれもある。
管理組合が行った新型コロナの感染対策が、感染住戸の特定につながる結果となった場合、管理組合に責任が生じることとなるのではないか。
集会室の利用中止、エントランスにアルコール消毒液を設置、エレベーター内での会話自粛を要請するなど、コロナ感染を意識した対応は必要と思う。感染者を対象とした対応までは踏み込み難いのではないか。

マンション内での新型コロナウイルス感染拡大を心配する声に、管理組合としては無関心ではいられません。どのような対応が考えられるのか、どこまでの対応をすべきなのかをしっかり議論し、その内容を住民や組合員に共有していただくことが重要と思います。いたずらに不安をあおったり、噂を拡散したりする行動は住民同士の反目や差別につながりかねません。管理組合で検討した議論をみんなで共有し、協力して感染予防に努められますことを期待します。

(photo by photoAC)

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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