【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その121】マンション管理会社の委託料は毎年値上げが当たり前?

近年の人手不足で、最低賃金は毎年3%を超える引き上げが続いています。
管理員や清掃員をマンションに派遣する労働集約型の管理会社にとって、これは深刻な状況です。特に小規模なマンションでは、フルタイムの管理員は置けません。しかしながら短時間勤務の管理員は補充しようにも応募が無く、同業者間で奪い合いの様相です。

定年を延長し、再雇用を重ねることで何とか人員をやりくりしているため、後期高齢者の管理員も少なくなく、昨今では病気による突然の欠勤や、脚立からの落下や作業中の転倒など労災事故が頻発しています。これらは全て管理会社のリスクであり、不測の事態に備えて確保すべき予備要員が必要なのですが、常に欠員が生じている状況です。

これらの事態に直面する管理会社は毎年管理委託料を改訂せざるをえないでしょう。

小規模なマンションほど収益性が悪くなりがちですから、値上げが認められないなら管理はお断りするといった強硬な姿勢を見せる管理会社も増えています。
それならば管理会社の変更を検討すればよいと思われるかもしれませんが、小規模な既存マンションの管理を積極的に受託するところが少ないのが現状です。以前はリプレイスにより管理委託料が何割も下がるといったことが当たり前でしたが、かつてのように高止まりしていた委託料で値下げ余地の大きかった契約も、毎年の労働需給のひっ迫で、いつの間にか管理会社にとって不採算の物件に陥っているかもしれません。

特に、大手デベロッパーの管理子会社はマンション管理業全般について情報交換の会合を定期的に行っており、自らを『エイトマン』と呼んでいるとか…。昔のアニメヒーロー各社は天下無敵です。同業他社の契約を安値でかすめ取ること等するはずもなく、お互いの権益を守るため、お互いに協力を惜しまないのでしょう。

管理会社が値上げを申し入れた場合にこれを応諾するべきかどうかは、個々の契約内容を評価して判断する必要があります。同業者から同一条件で見積もりを出してもらい、交渉材料にすることも有効ですが、価格一辺倒の交渉ではなく、管理会社の負担を軽減するような交渉がお互いにできればいいと考えます。

 

 

管理会社の負担となる人的対応業務を中心に、契約の内容を見直してはどうでしょう。たとえば・・・

① 管理員業務の見直し
例えば週3日、一日当たり3時間の巡回管理員の派遣は、週3回の巡回清掃に変更する。時間は拘束せず、共用部分の清掃を一通り終えれば業務完了とみなす。
この場合、役員や住民との折衝、修繕工事の立ち合いなどは、管理員とは別のスタッフが担当する。

② 理事会のWeb対応
理事会へのフロント担当出席を求めず、Zoomや携帯のFacetimeで対応することを可とする。

③ 理事会、総会の年間回数を規定する
例えば理事会は年6回以内、総会は年1回と規定し、管理組合の要請で追加開催する場合は1回当たりの追加料金をあらかじめ取り決める。

④ 理事会、総会の開催時間に制限を設ける
22時以降の深夜にわたるフロント担当の総会、理事会出席は不要とし、以後の進行は管理組合が行う。やむなく深夜対応を要請する場合はその場合の費用精算、タクシー代等交通費の精算方法を取り決めておく。

⑤ サービス業務の見直し又は有償化
夏祭り等コミュニティー行事への参加など、管理業務委託契約外の業務を依頼しない。これを要請する場合は有償とする。

⑥ 管理業務委託契約の長期化
1年契約の管理業務委託を3年から5年と長期化する。(重要事項説明の省略と契約事務及び契約印紙の節約を企図する。)基幹事務に関する契約は重要事項説明が必要だが、それ以外の管理員業務、清掃業務、設備管理業務、警備業務などは、基幹事務契約とは別の付随業務として別途契約を行う。付随業務委託契約の仕様変更及び価格改定は、総会で承認された予算の範囲で理事会に一任する。

管理会社と腹を割って話し合えば、これ以外にも価格を抑えて、管理の質を維持するための方策が見つかるかもしれませんよ。

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