私が理事を務めていたとき、管理会社のフロントとの連絡はメールで行っていた。
たとえば、私は会計理事を担当していたことがある。回付された会計資料に不明な点があれば、押印する前にメールで問い合わせた。しかし、メールを出しても一両日中の返信はまず無い。一週間程度で返信される場合も稀にあったが、たいていは理事会の数日前という土壇場で来る。ばっくれられたまま理事会に突入することもある。うちの理事会は開催頻度に決まりが無いが、だいたい2カ月に1回開催されていた。つまり、私のメールは2か月弱放置されることもあったのだ。
顧客からのメールを無視するという、私の常識には無いこの反応に当初は戸惑ったが、フロントによるこのようなしょっぱい対応はうちのマンションに限ったことではないらしいことが徐々に分かってきた。
業界全体がこうなのか。他のマンションもそうならしょうがない?いや、ダメだろう。
そもそもフロントは私のメールを読んでいるのだろうか?うちくらいの中規模マンションの場合、フロントは1人で10件以上担当を持っているようだし、忙しいっちゃあ忙しい。でも、私的なメールならともかく、管理組合の理事から来た管理業務についての問い合わせだ。即座に回答することは無理だとしても、メールを受信したことやいつまでに回答可能か返すのはビジネスとしては当然だ。というか、社会人としての最低限の礼儀だろう。
今回はインターホンシステムのリニューアル工事に関するやり取りを例に取り、以下の疑問について検証しようと思う。
・フロントはメールを読んでいるのか?
・メールチェックの頻度はどのくらい?
・彼らは読んだあとどう反応する?
なお、本コラムはメール、当時の理事会議事録と資料を元に、私の記憶をひも解いて記載する。
20期、21期:インターホンの不調からリニューアル検討へ
私が理事に就任したのは21期。マンションが建ってから20年以上経過し、あちこちで不具合が出始めたころだ。
前年の20期に、ある住戸でインターホンの音が聞こえないという不具合が報告され、それがリニューアルを検討するきっかけになったようだ。当該住戸の不具合の原因は住宅情報盤(室内のインターホン親機)の問題だったようだが、メーカーによると、その年の9月末で製造を中止し、今後は修理用の部品や住宅情報盤の調達が難しくなるとのことだった。
20期の理事会では次期の工事予定とし、翌21期から検討を開始した。ただし、21期では具体的な検討には至っていない。
当時の議事録によると、メーカーの担当者を理事会に呼んで説明を受けるも、「リニューアルの必要性やメリットが分かりにくいため引き続き調査検討事項とする」ことになった。結局、何も決定はしなかったらしい。
エントランス解錠の不具合→鍵交換の検討も
同じころ、エントランスのオートロックでも問題が発生していた。鍵穴に鍵を差し込んでも解錠がスムーズにできない。シリンダー内部の物理的な摩耗によるものだが、すでにメーカーでの生産が終了しており、不具合が発生するたびに業者を呼んで分解掃除して延命を繰り返していた。限界が目前に迫っている中で、インターホンと同時に鍵の交換も検討することになった。
つづく
(photo by photoAC)