大規模修繕についてもやもやした気持ちをかかえつつも、決定的な「悪徳コンサル」の証拠は挙げられないまま、次期役員の仕事を引き継いだI子さんと妻だったが、次に浮上してきたのが「マンション建設時のタイルの施工不良疑惑」だった。
役員同士の雑談の席で、今期の男性理事長から次のような話があったらしい。
「大規模修繕で補修したタイルですけど、かなり量が多かったんですよね~。」
このK山理事長、大規模修繕が行われた前期においては副理事長を務め(ひきつぎの席で「足場の費用は妥当だった」と発言した人物だ)、今期は立候補で役員に残っている。マンションの管理組合の役員なんて、輪番で回ってきて、いやいや引き受けるケースがほとんどなのに、なんというか、奇特としか言いようがないのだが、内装関係の仕事をしているそうで、大規模修繕についても建築の話についても、たいていの人間よりかなり詳しいのは頼もしい。
聞けば、築10~15年のマンションでは、浮きが5%以上なら、マンションの建設当初の不良が疑われるのだとか。
「このマンションは築13年でしたよね。大規模修繕でのタイルの補修って、何パーセントやったんですか?」
妻が尋ねたところ、
「私の計算では、13パーセント近いです。」
それは、かなりやばい数字なのではないか…?
大規模修繕の監理にあたったB建築設計の担当者の話によると、「西日や道路の振動のせいで、マンション西タイルの浮きがかなり多かった」らしい。ただそういった特殊な事情についても、建築会社は、マンションの計画時点から把握していたはず。わかっていて対策をとらなかったのなら、それは彼らの責任となるのではないか?
「タイルの補修場所と数量を調べるために、大規模修繕時の施工図面を確認してみましょう。」
これが「タイルの図面がない!」問題の幕開けだった。
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