【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その36】管理組合の歴史は管理会社によって作られる

元大手管理会社取締役_ブログ

ー管理組合の歴史は管理会社によって作られるー


「歴史は勝者によって作られる」といいます。

 

戦争に勝った者、政権を奪取した者、企業の支配権を取った者、これら勝者は自らを正当化し、退けられた者を否定し、自身の都合の良い、様々な記録を残します。
退けられた者をかつては支持していた人たちも、勝者の前では口をつぐみます。そのようにして積み重ねられた膨大な記録が後世に残り、歴史となるという意味だと思います。


社会主義を掲げる国家の多くは書記長、第一書記などという役職者が実質的に国家を支配してきましたが、権力抗争の勝者となって書記という文字通り記録を作成する立場に立つ者だからこそ為し得る支配構造だと思います。


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さて、管理組合に目を移すとどうでしょう。

組合員の中から総会で選任された理事。その理事の互選により選任されるのが理事長です。民主主義の制度の上で選任された理事長が、いつの間にか他人に支配されているといったことはないでしょうか。


理事会にも総会にも同席する管理会社のフロント担当者。本来は総会や理事会での補助者で、発言権すらありません。ところが会議の資料を整え、議案書を作成し、場合によっては会議の議事進行を行い、議事録の案を作成します。管理組合の役員間の根回しまでお願いするうちに、どんどん理事以上の存在感を示すようになっていませんか。


理事会の席では次々に管理会社から見積書や提案書が提出されます。
組合員から何も意見を挟まなければ、補修工事や、特別清掃、植栽の植え替え等が管理会社の見積もり提案のままに、総会で予算承認されてゆくのです。そして新年度の理事会では管理会社は堂々と「総会の決議事項ですから」と、管理会社の提案通りの内容で、仕事をものにしてゆくことが繰り返されます。


管理会社を信用して、「プロとしていいようにやってくれるだろう。」と期待し、すべて任せきりにしていれば、やりたい放題という意味で、「いいようにヤラレ」てしまいます。
提案内容の妥当性、提案金額の妥当性、発注先の妥当性、すべての説明責任は管理会社の側にあります。納得するまで議論を尽くすことが重要です。そしてその内容は、きちんと議事録に反映しなくてはなりません。


組合員からの管理会社に対する批判的な意見や、管理不全の指摘があった場合、管理会社が作成する議事録案に、管理組合目線での正確な記述が盛り込まれているでしょうか。
以下の事例のように、管理組合としては左側に記述したことが真実なのに、管理会社の修辞法にかかると右側のようにさりげなく書き改められていませんか?

 

「管理会社に○○について苦情があった」「管理会社に○○について指摘があった」

「管理会社は非を認めて謝罪した」「管理会社は今後の改善を約した」

「○○円の予算で××工事を行うこととした。」「○○円の予算で管理会社に××工事を発注することとした。」

 

管理会社の作成する議事録案は、自らの非は認めず、歪曲し、割愛し、付加し、自社の都合の良いように作成されてゆきます。管理組合の歴史を歪めるわけにはゆきません。議長及び議事録署名人は議事録の修正を何度でも、納得ゆくまで管理会社に要求すべきなのです。

 

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