【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その96】管理会社の手厚いサービスは本当に必要?

大手管理会社のほとんどは、管理室での現金収受、宅配便の預かり、専有部分の鍵の預かり、住み込み管理員など、一昔前の管理会社が行っていたサービスを取り止めました。

現金の収受は金銭事故や盗難被害の温床です。 管理員が受け取った管理費等の金銭を会社に正しく報告して管理組合に入金していなければ、管理費の横領です。そしてその責任は、管理会社(雇用主)にとっては無過失責任といって、「不心得な社員の行った横領は知らなかった。」では済まないのです。会社が知らなかったとしても、社員が会社の仕事として行っていた中で起こった事態については、会社の過失が有る無しに関らず、全て雇用主がその責任を負うのです。

金銭不祥事が起これば、管理会社は所属するマンション管理業協会や国土交通省に届け出る義務が生じますし、場合によれば、マンション管理適正化法に従って指示処分などを受け、さらにはマスコミに社名を含めて実名報道されるといったリスクが生じます。

宅配便は、近年ネット通販の普及で加速度的にその量が増大しています。管理室の空きスベースからあふれだし、お歳暮やお中元のシーズンでは集会室などで一時保管せざるを得ない場合もあるようです。冷蔵品や生ものを預かって受け渡しできない場合のトラブルとなるケースもあります。最近では、ほとんどのマンションで宅配ロッカーが普及していますから、管理員による宅配便の受け渡しは廃れてきました。

鍵の預かりは、管理組合や管理会社が住民とのトラブルを避ける意味からなくなりました。管理員が専有部分の鍵を預かるのであれば、その運用に関しては会社が同意し複数社員が立ち会うなり、管理組合役員が立ち会うなど厳格な取り扱いが必要と思います。刑事ドラマで、警察の要請で管理員が鍵を開けるシーンがしばしば登場しますが、分譲マンションではありえないことです。居住者から、住居不法侵入や居室内の現金や貴重品の紛失・破損を申し立てられた場合は、どのように申し開きするのでしょうか。

住み込み管理員は人材不足です。夫婦住み込みの条件で雇用し、奥様がお亡くなりになったからといって、これを理由に管理員のご主人を解雇できるでしょうか。高齢を理由に管理員の退去を求めても、退去先や身寄りがない場合(そういう方だからこそ住み込み勤務に応じているというのが実態です。)は、管理員居室からの退去を拒まれるケースもあります。近年住み込み勤務の交代要員の確保は困難です。管理組合の側からも、管理員居住スペースを有効活用したいと要望されることもあります。これら諸般の事情で、住み込み管理員は通勤勤務に取って代わっているのです。

 

 

ところが、未だこれらのサービスを継続している一部の管理会社があります。住民とマンションの二つの老いが進んでいる管理組合では、このような管理員の手厚い?対応を高齢住民も望んでいるのだそうです。
築40年以上の高経年マンションで、新築当初から居住する長老の理事が引退し、比較的若い組合員が主体となった理事会が様々な改革を提案し始めました。

今までは修繕工事は、全て管理会社の提案に従い相見積もりすら取らず発注していたそうです。大規模修繕工事もマンションを施工したスーパーゼネコンに特命(他社と比較検討することなく特定の一社に仕事をお願いすること)で発注しています。

新理事会は、デベロッパーの子会社の管理会社の高額な委託料の現状を憂い、複数の管理会社から見積もりを取りました。国内有数の大手管理会社に見積もり依頼したにもかかわらず、現状よりも大幅に安い金額を組合員に提示できました。しかしながら、管理室での現金等の預かりサービスや宅配便の預かりサービスの継続は、他の管理会社では望めないことが判ると、高齢組合員から強い反対意見が出て、管理会社の変更はできなかったそうです。

現金書留まで管理員が預かり、管理室に大型冷蔵庫を備えて冷凍・冷蔵品まで預かる。場合によっては、上階の玄関先まで重い荷物を管理員がお届けする。現在の手厚いサービスの継続を支持し、宅配ロッカー設置を不要と主張する住民。高齢の住民から根強く支持されていることを知った管理会社は、管理室での現金などの預かりや宅配便の預かりサービスの継続を盾に、割高な委託料の見直しを拒否します。
旧来のサービスの継続が、管理会社として大変なリスクを抱えているという認識を持たない管理会社もまだあるのだと妙に感心したものです。

旧来のサービスの存廃は、規約や細則の規定に触れるか否かということも抑える必要がありますが、住民の十分な意見交換の上で提案しないと実現できないということを知りました。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その96】管理会社の手厚いサービスは本当に必要?”

  1.  同じ管理会社でも、マンションにより過剰サービスの程度が違います。
     しかもそのサービスは、特定の人に対するサービスであることもあり、不正の温床にもなりかねません。
     マンションは、区分所有者、居住者にかかわらず、すべてが同一の基準でなければなりません。
     管理委託契約や管理規約の適用も、同一でなければいけません。
     管理費等の滞納の対応が異なれば、訴訟の際、敗訴にもなりかねません。

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