【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その101】管理費等滞納者に対する請求を管理会社にどこまで任せられるのか

管理会社の管理委託契約は、委任契約(基幹事務)と請負契約(管理員、清掃、設備管理、警備等その他の管理事務)の混合契約と言われています。

更に、委任契約は、原則無償契約であるところ、管理委託契約は有償の契約であり、これを準委任契約と呼ぶようです。(委任も準委任も法律関係に大きく変わりはないようです。)

委任の業務の進め方としては顕名(相手に対して、自分は何者で、誰から何を委任されたかを明らかにする)ことが必要で、「○○管理組合管理受託者」などと管理会社が滞納者に対する管理費等の請求書面に明記しているのはこのためです。管理業務を受託していること及び委託の内容に管理費等の請求業務が含まれることを滞納者の組合員は承知しているはずですから、理事長名での請求でないことを理由に、請求が無効などと滞納者が主張することは許されません。

弁護士法の72条(非弁行為)が禁止する、報酬を受け取っての法律事務に該当するかについては、私の理解は以下の通りです。

管理会社が準委任により行える、非弁行為にあたらない行為

  1. 債権額の通知
  2. 管理組合が決定又は規約等に規定する遅延損害金や法的手続き費用等が発生することとなる期日の通知=通常の元本支払いだけで許される期日の通知
  3. 2を超過した場合の管理組合が決定又は規約等に規定するその後の対応の予告。(駐車場解約、遅延損害金の発生、法的手続きへの移行などを予告)

 

管理会社が行ってはならない非弁行為にあたる行為

  1. 支払い督促から少額訴訟に至る法的手続き
  2. 支払い期日の猶予
  3. 分割支払いの承諾
  4. 遅延損害金の賦課猶予、駐車場解約の猶予などをバーターとして支払いを約束させるなど交渉行為
  5. すでに発生している未納管理費等(遅延損害金を含む)の一部または全部の免除

 

 

1については定型の書式を提案し、管理組合名、債務者名、債権額を示し、その内容を理事長が確認し、提案の書式内容に沿って理事長が署名押印したものを送達する行為は管理業務の一環で可能と思います。

定型の支払い督促や訴状のひな型の提示までは許されるとしても、準備書面の作成などは、訴訟の代理人である弁護士や司法書士しかできない行為と思います。

2、3、4、5も理事長(担当理事)と管理費等を滞納している組合員との交渉同席し、求めに応じて助言する(最終判断は理事長又は担当理事が行う)ことは管理会社に要請してよいと思います。とはいえ、4の債権放棄は、厳密には組合員全員の同意が必要で、理事長が承認しても管理組合内部の問題は残ります。(実際には全員同意によらず減免に応じるケースも多いと思います。)

弁護士に本件を相談すると、自らが身を置く業務独占の士業を守るために、総じて過敏なネガティブ意見が述べられるケースが多いと思います。しかしながら、マンション管理適正化法が、会計、出納を管理会社の行う基幹事務の一部を構成すると規定しています。

国土交通省も標準管理委託契約書の中で、この契約を委任契約だとして、管理会社に善管注意義務を課し、その上で管理費等の請求行為を行うことを管理業務の一部と規定しているのです。
管理会社には、滞納管理費等の督促事務においては、回収の実が上がることを第一に積極的な対応をお願いしたいものです。

(photo by photoAC)

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その101】管理費等滞納者に対する請求を管理会社にどこまで任せられるのか”

  1.  管理費等の督促は、重要事項説明書に記載されていることが多いです。
     管理組合は、法律論には疎く、おっしゃることは分かりますが、実際には困難です。
     むしろ、重要事項説明書が、どの様な効力を持つのかが問題です。
     重要事項説明書は、何のためにあるのでしょうか?
     原稿作成時に、管理組合が関与できるのでしょうか?
     管理会社が重要事項説明書を一方的に作るなら、瑕疵があっても、法令違反があっても、管理組合には責任がありません。
     重要事項説明書の説明も、完全にされているのでしょうか?

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