前回に続きもう一つ「特定建築物定期調査」の実例の紹介です。
実例④
- 【報告書上の表現】階段-階段-物品の放置の状況 《調査結果》→要是正
階段はマンションの規模・構造により、通常の階段と避難階段にわけられます。タワ-マンションなどでは特別避難階段というより基準の厳しい階段もあります。このため、ここでは階段-階段というわかりにくい表現になっています。 - 【実際の現象】物品が放置され通行に影響が出ています。火災、地震の避難時に速やかな非難が出来なくなり危険です。要是正として指摘します。 「特定建築物定期調査」の報告でこの指摘が出てきたら、該当する区分所有者または居住者に事情をよく説明し早期の片付けを申入れてください。
「特定建築物定期調査」のポイントをまとめます。
実施は3年に1回です。
- 現時点で、東京都以外では、サービス付き高齢者住宅を除いて一般的な分譲マンションに「特定建築物定期調査」を行わせている自治体はありません。複合型マンションやタワーマンションなどは調査が必要になってくる場合があります。
- 3年に1回の実施ですので、理事に就任した場合は、要是正として指摘された項目は内容をよく把握し確実に是正していきましょう。高い費用を支払い行っている調査なのに、早期に是正を行わないうちに理事会メンバーが交代して放置され、3年後に同じ指摘を受けるといったことも時々見受けられます。
マンションの維持管理というと、長期修繕計画、大規模修繕工事といった言葉にどうしても目が奪われがちで「特定建築物定期調査」に関心を持たれている方は少ないかと思います。けれどもこの調査は「建物を長く安全に使うために定期的に調査し悪いところは改善していきましょう。」という趣旨の制度で、長期修繕計画、大規模修繕工事に合致するところも多いため、この制度をより有効的に活用していくことをお勧めします。
具体的には、実際の調査の状況を見せてもらう(調査会社は嫌がるでしょうが)、要是正の指摘事項を管理会社任せにせず、理事会メンバーで現状を確認し補修方法を検討するなどが考えられます。速効性はないかもしれませんが、色々な視点からマンション管理を考えることに繋がっていくような気はします。
特定建築物定期調査は、小泉改革前は建築士の飯のタネでした。
建築士団体の地域割りがあり、このマンションはどの建築士の担当で、検査費用も決まっていました。 談合ですから法律違反ですが、「みんなで渡れば怖くない」ので」、他の点検業務も同様のことが行われていました。
しかし、景気の停滞が続き、なりふり構っていられなくなった連中が「談合破り」を始め、安値で請け負うようになってきました。
社会は変わり、人も変わると、考え方も変わります。
おかしなことに気付く人も出て来ます。
それを「クレーム」にするのは、管理会社の得意技です。
「悪法も法」ですから、法や政策がおかしいことに、気づいてほしいです。