管理会社の担当者が深刻な顔で理事会に報告します。
「コンシェルジュ業務を委託している下請け企業から、当マンションの業務を来年2月末で撤退したいとの要請がありました。同業他社に業務をお願いすべく相談しましたが、とても現状の金額を据え置くことはできません。来年3月からはコンシェルジュ業務の提供金額は、従来の月額30万円から60万円に改定していただくようお願いします。人件費が高騰しております。東京都の最低賃金は○○円から△△円に改訂され…」
理事A
「最低賃金は2倍になったわけではないのに、なぜコンシェルジュ業務は2倍になるのでしょう。」
管理会社担当
「現在の業者が辞退するとのことで、他をあたったところ、この金額でないと手配できないのです。」
理事B
「今おっしゃった金額は、管理会社として管理組合に提示される金額ですね。人件費の高騰を理由にされるのであれば、下請けの業者に今までいくらで発注していたのか、これからいくらで発注する予定なのか、金額を開示して値上げを申し出られるべきではないですか。」
管理会社担当
「下請けの発注金額は社外秘なので、開示することは申し訳ありませんができません。」
理事C
「そもそも契約期間満了までは現状の管理委託料の改定を申し出るのはおかしいのではないですか。業務の委託先が変わるとか、外注額が上がることは管理組合とは直接関係ないのではないですか。それとも値上げを認めてもらえないなら管理自体を撤退するとの覚悟ですか。」
管理会社担当
「・・・・・・」
多くのマンションで、管理会社が委託料の改定を申し出ています。
しかしながら管理会社の言い分と、管理組合の意見はなかなか噛み合いません。それはなぜでしょうか。
値上げの主たる原因を人件費の高騰と各社異口同音に言い立てるのですが、自社の管理員の給与明細も、清掃業務の外注先の金額も非開示と突っぱねるのですから、噛み合わないのは当然です。
外注先の費用や自社社員の人件費を開示して、それに一定の経費(手配を行い、元請けとしての責任を全うし、利益をあげるための費用)を上乗せすることを取り決めれば納得感は得られます。コンシェルジュの再委託先を管理組合と管理会社がオープンに協議し、再委託先の金額を決定して、更に一定割合を管理会社の経費として認めるとの合意が得られれば理想です。但しこれを議論するにしても、適正な経費率は果たしていくらなのか、納得のゆく議論をすることは困難です。会社経営に必要な経費率は一般の消費者の皆さんが想像する以上に高い比率ですから。管理会社の側にも相当の抵抗感があるでしょう。
安い下請けを探たり、合理的な発注をして会社として更なる利益をあげるのが経営努力との思いもあるでしょう。
もう一つの解決策は、管理委託料全体の妥当性を検証するため、同じ条件を他の管理会社に提示して比較することです。
一度他社との公正な比較によって禊(みそぎ)を経て妥当と判断した金額は、神聖なものとして尊重されるべきです。
その後は、物価上昇率に応じて管理会社は堂々と価格改定を申し入れるべきですし、管理組合も当然にこれを受け入れるべきです。価格改定のためのルールが確立すれば、お互い腹の探り合いのような管理委託料改定のための不毛な議論を排して、理事会が本来果たすべき、管理組合の運営に専念できる環境が整うと私は考えます。
コンセルジュに限らず人件費の削減は急務です。
人材不足ですし、少子化が予想されているので、絶対数が足らなくなります。
管理員やフロントもそうです。 IT化やAI化、巡回制度化が可能な業務ですから、管理組合側では対応できず、管理会社側で対応しなければなりません。
清掃員は削減が困難です。 どうしても人手がないと対応できません。
しかし、外注で対応が可能ですから、適正価格なら、飲まざるを得ません。