梅雨の長雨に時折ゲリラ豪雨が牙をむく季節となりました。
昨年秋の台風による洪水被害で、タワーマンションが水災に弱いことが広く知られるようになりました。
建物を高層に積み上げれば、給水設備などの機械室、電気室、機械式駐車場などの重要施設は地下部分へと押しやられます。これら設備の保守管理や駐車場への出入りのためのスロープは大きく地下に向けて口を開けているから大変です。
近隣の排水不良で水位がスロープや止水版を超えたとたん、滝のように一気に流れこむ水は、排水ポンプなどでは対応できるものではありません。大量の駐車車両や電気室、機械室が水没すると、甚大な被害となります。受電設備、エレベーター設備、給水設備などの機械室が水没すると、これらの設備が完全に復旧するには数カ月を要するでしょう。
専有部分には何ら損傷が無いのに・・・。
階段を使って高層階まで上り下り。電気、水道、ガス、インターネット・通信まで遮断された、悲惨な我が家を皆さん想像してみてください。
管理会社が開催する説明会で不満をぶつける組合員や入居者の怒りは収まりません。
「マンションの周辺は水が引いて、周りは普通の生活が戻っているのに、うちのマンションだけがなぜこんな目に合うのか。」
「こんな水没マンションなんて資産価値ガタ落ちじゃないか。」
等々。
このコラムの読者の皆さんならもうお判りでしょうが、管理会社を責めても致し方ないことなのです。
災害被害者の皆さんを前に管理会社としては、その場が炎上しないように細心の注意を払って、それでもどうしても伝えなくてはならないことがあります。細心の注意を取り除けばこんな感じです。
地震や水害を被るようなマンションを買ったのは自己責任だと、議論を終えてしまうのは少し違うのではないかと私は思います。近年供給されるタワーマンションで地震に関する備えをアピールしないデベロッパーは皆無です。耐震設備、制震設備はタワーマンションの購入者にとって必須のものと認知されているからです。
一方水害被害に関する備えに関しては今まで全くと言っていいほど議論されてこなかったと思います。
「ハザードマップや、過去の出水時の水位を参考として、地盤の盛り土、止水版の設置などで出水被害に対しては万全のマンションです。万一〇〇センチの水位に達しても、当マンションは被害が生じないよう設計されています。」などといったことを謳うマンションの宣伝をまだ見たことがありません。
今後マンション設計において、水害対策を念頭に置くべきとの認識が広まり、デベロッパーがこぞって秀逸な水災対策をアピールする契機となることを期待します。
近い将来、マンションの販売に際して、耐震性と同時に、「何センチの出水まで耐えるか」といった水害対応性能の公表が義務付けられるようになるのではないでしょうか。
これからのマンション選びは水没被害の可能性も重要ポイントだと認識しましょう。
(photo by photoAC)