【フロントはメールを読んでいるのか問題】8.迷走

8月10日にフロントから来たメールには、インターホンのオプションの見積もりのほかに、鍵の見積もりも添付されていた。
電子キーには一括ID方式と個別ID方式の2種類の製品があることと、それぞれの仕様に関する説明が記載されていた。管理会社あるいは鍵の業者が提案しているのは一括ID方式だ。
さらに個別ID方式のID管理に関する説明に管理上重要なことが書いてあった。

それぞれの号室に対して8個までの鍵登録が可能で、鍵を紛失した場合は個別に抹消する事ができます。
メーカー又は代理店にて紛失したカギのデータ登録抹消、及び新しいカギのデータ登録作業を実施します。
その際に別途出張費として約12,000円(新しいカギ費用は別途発生)がかかります。

ということだ。鍵の管理は厳格にできるが、これは結構高いのではないか?

フロントからメールが来たこの日、理事長から早々とメールが来た。「電子キーは個別ID方式を採用したいと考える」とのこと。
インターホンは、まぁいいだろう。仕様を確認した上で採用する機種を決定したし、最終見積もりの金額は、私調べでは妥当な金額に思われた。
鍵は、これでいいのか?仕様がよく分かってないぞ。というか、電子キーに2種類あるなんて、今回のフロントのメールで初めて分かったんですけど!

翌8月11日、営繕を担当している一級建築士の理事が「理事長の方針に賛同」と、包括的な賛成を表明した。つまり鍵は個別ID方式を採用する意向ということになる。

マジか?仕様が分かっていないのに、この人たちはなぜ先に進む?

このまま放置すると決まってしまう。危機感を覚えた私は異議を唱えることにした。建築のプロに素人が対抗するには理論武装が必要だ。私は鍵について調べ始めた。
まず、現時点で分かっている以下の問題点をまとめて8月13日に役員にメールした。

— 鍵(タグ)の本数について
1世帯あたり3本で見積もりが出されているが、理事会では管理費の負担に応じて配付本数を決めるという話になっていた。本数が変われば金額も変わるから、この見積もりはダメ。
最終決定を出していない理事会の問題もあるが、管理会社も見積もる前に本数について確認すべきだ。

— 停電時の動作
7月の理事会で停電時の動作について質問が出され、管理会社が業者に確認して回答するはずだったが、いまだに無い。

— 鍵紛失時の扱いについて
個別ID方式と一括ID方式とでは、鍵を紛失したときの対処方法や費用が異なるはず。業者の説明もなく、それぞれがどういう対処になるか分からない状態である。

— 個別ID方式について
個別ID方式の見積もりは総額だけで明細がない。
仕様についても分かっていないことが多い。理事会で配付された資料に記載されていた製品型番を手掛かりとして仕様について調べてみたところ、ネットで業者向けのカタログのような資料を見つけた。
この資料によると、個別ID方式と一括ID方式とでは、IDの扱い以外もかなり異なる仕様のようだ。理事長案では個別ID方式を採用するとあるが、その前に説明を聞く必要があると考える。
鍵は、インターホンに比べると交換の必要性は低いが、調子が悪くなるたびにメンテナンスをしているし、交換は必要とは思う。しかし、土壇場のどさくさに紛れたやっつけの見積もりで決定するのはいかがなものか。
鍵の工事をインターホンと同時に実施するなら早急に管理会社に説明させるとか、スケジュールを見直すとか、何らかの対応が必要だ。慎重を期すなら、鍵交換の実施時期の見直しもあり、と思う。
少なくとも私は今の情報で選べないしOKは出せない。

鍵は見積もり金額について検討する以前の段階だ。これで理事長の暴走にひとまず歯止めが掛かったか?

揺れる鍵の本数

鍵の配付本数について少し説明しよう。
先のメールでも少し触れているが、鍵の配付本数について、この時点では決定に至っていない。
理事会で1世帯あたり何本配付するかについて検討した際、当初、各世帯3本の方向で話が進んでいた。しかし、理事長が「大きい部屋では家族も多いし管理費も多く負担している。管理費の負担に応じて本数を決めたほうがいい」と言い出した。
まあ、その意見も分からなくもない。異論は出なかった。問題はどこで線引きをするかだ。
その後の理事会では2本配付と3本配付の2種類となった。2本配付は議決権数1の世帯(世帯人数1人~2人)、3本配付は議決権数2以上の世帯という意見が出ていたが、決定に至らなかった。
次の理事会では3本配付を基本とし、とくに大きい2世帯(議決権数4)を4本とする、という方向になった。
その次の理事会では本数についての検討が行われたか私は覚えていないのだが、議事録によるとアンケートをとることになったようだ。結局アンケートは実施されなかった。放置のすえ忘れられたか、あるいは話自体が無かったか(当時の理事会議事録は信頼性に欠ける部分がある。「記録を残すー書類の保存3 理事会議事録(前編)」)。

これは理事会運営のまずさを如実に現している。決め方はそのときの気分だし、きちんと結論を出さないから毎回本数が変わるのだ。本数が決定しないまま、1世帯3本配付の見積もりが出された。

つづく

(photo by photoAC)

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