【図面を取り戻せ!~大規模修繕後の戦い】14.契約書

相談を重ねた結果、妻たちは、まずは図面の「法的な位置づけ」を確認してみることにしたらしい。
「法的に」と言っても、いきなり弁護士事務所に駆け込むのではハードルが高すぎる。何より理事会としての予算もない。
とりあえず妻たちが頼ったのが「公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター」との機関。ほかに、弁護士ドットコムでの無料相談なんてのも利用して、「図面」の「法的な位置づけ」を調べ始めたようだ。

分かったこととしては、
「契約書に書かれてるんやったら、出させる権利があるらしい。何も書かれてへんのやったら、図面が無いことの具体的な損害が証明でけへんと、交渉は難しいかもしれへん…。」
妻はため息をつく。
「やっぱり確認するしかないかな、契約書。」
威勢は良いくせに、面倒な調べごととこととなると、なかなか気が進まないようだ。
しかも管理会社に連絡して、取り寄せたまではいいのだが、I子さんもY子さんも、それぞれ仕事で忙しい。書類などの読解作業は、時間の融通がきく妻が、一手に引き受けることになったようだ。

 

「もうすぐ年末やのに、あたしかって忙しいのに、かなんわ…」とぼやきつつ、頼られていることにまんざらでもない様子の妻。結局は良いように使われているわけだが、ほめられれば単純に喜んで木にも上る、要はそういうヤツなのだ。

「約款ってとこに、『精算時に、契約上引き渡すべき図書を引き渡し』とは書かれてるねんけど、それが何を指しているのか分からへん。」

法的な書類についてはまったく素人の妻は、用語や形式については、いちいちネットで検索しながら読み進めているようだ。

「仕様書ってのが、契約書とは別にあるらしいわ。管理会社に連絡して取り寄せんな。なんでいっぺんに持ってきてくれへんかなぁ、もぉ。」

そうはいうが、管理会社のS社は、大規模修繕の監理者として、管理組合が契約を結んだ当事者だ。コンサルティング会社のB建築設計は、その下請けとして実地の仕事にあたったにすぎないし、その不始末について、少なくとも形式上は、S社が責任を取ることになる。口では「解明に協力いたします」なんてきれいごとを言っていても、本音では、先の補償案で、早めに手を打たせたいにきまっている。仕様書にしても、妻の求めがなければ、出さずに済ませたかったはずだ。

そんなS社の思惑などまったく意に介さず、妻は担当者に連絡して、仕様書を取り寄せる。はっきり言ってけっこうなページ数の書類である。

「『完成時に引き渡すべき図書』って欄に、『躯体補修図』って書かれてるねん。これのことちゃうかな、いや…きっとこれがそうやわ。他にも『施工図』とか『躯体劣化図』とか『野帳(途中の段階のメモ)』とかって言葉がある。」
なにやらぶつぶつ唱えながら、妻は仕様書を読み進めていく。

ただ、僕も妻も、今回初めて知って驚いたことだが、こういった契約の文書を読み解いていくことに関して、彼女は実は、意外なほどの能力を有していたのだった。
「ほら、あたしって論理的な人間やから。」

昔から、「へ理屈を言うな」と叱られても、「理屈とちがう、論理や。」と、食い下がるような、かわいげのない子供だったらしい。妻曰くの「論理的思考性」に、「誰かが書いたものなんやから、読んで読めないことはないやろう。」との楽観性と、そこに、B建築設計に一言返してやらねば気が済まないとの負けん気も加わっているようだ。

「契約書には、精算時に『引き渡すべき図書を引き渡し』と書かれている。仕様書の『引き渡すべき図書』の欄に『躯体補修図』と書かれている。私たちが『タイルの図面』と呼んでいるものは、『躯体補修図』に含まれる。」
つまり、

「『タイルの図面』は、契約上、提出されなければいけない書類やった!」

契約書類と格闘した妻が、最終的に出した結論がこれだった。

「S社も、B建築設計も、C技研も、それにK山理事長も、去年の大規模修繕に直接かかわった当事者全員が、そのことを認識していなかった。その上で、『総タイルの保証』なんかで収めようとしてたんや…。」

または、こちらが契約書の内容を確認していないのをいいことに、その条件で「手打ち話」を進めるつもりだったのかもしれない。

(photo by photoAC)

この春まで、大阪市内のマンション(50戸)で管理組合の副理事長をしていました。昨年の理事の引き継ぎ直後に、その前年に行われた大規模修繕の竣工書類のうち、タイルの補修図面が提出されていなかったことが判明。施工会社に「ゴンドラを掛けての図面復元」を確約させるまでのやりとりや、その間に判明した様々な問題について、オットの目を借りてお伝えしたいと思います。

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