【図面を取り戻せ!~大規模修繕後の戦い】15.理事会(2019年1月13日)

次の理事会を控え、I子さん、Y子さん、妻の三人は、日々検討を重ねていく(一応、というか、K山理事長にも毎回声をかけていたそうなのだが、関係をこじらせたままの彼からは、「時間がないので」とのそっけない返答しかなかったらしい)。

妻が探りあてた「法的な位置づけ」に加え、「タイルの図面が提出されていないこと」の問題点としては、以下のことが考えられたらしい。

(1)図面がないと、どのタイルが補修されたのか確認できない。なのでメンテナンスの保証が受けられない。
(2)図面がないと、タイルの工事が確実になされたか、確認できない。代金算出の根拠も分からない。
(3)図面がないと、どのタイルを補修したか確認できないため、今後の修繕作業に差し障りがある。
(4)図面がないと、マンション建築当初の施工不良の話し合いができない(マンションを建てたS建設は、図面がないと確認ができないと言っている)。

(1)については、既に持ち掛けられている「すべてのタイルの5年間保証」での補償でクリアできそう…というよりも、もともとその損害を封じるための話だったのだろう。加えて、ほかの問題についても納得のいく対応がなされるのであれば、図面がなくても、とりあえずは安心して、このマンションに住み続けられるのではないか。

まずは図面提出の交渉も引き続き進めるとして、最悪の場合の落としどころはそこかもしれない、と、妻たちは考えたようだ。

ただし(4)については、奴らは、次のような展開も予想しているらしい。
「S社やけどさぁ、図面を出さない前提で、話を進めようとするかもしれへん。」
管理会社のS社は、僕たちのマンションを建築・販売したS建設の子会社だ。
「図面が提出されたら、次は施工不良の話になるやんか。S建設は、施工不良の話にはしたくないはずやし、S社にしたら、親会社を守るため、図面が提出されへんで済むように進めたいはず。」

なるほど。図面が提出されていないことは、実はS建設にとっても都合のいい話なわけだ。

そして理事会当日。

「タイルの図面」だが、提出の義務は施工にあたったC技研にあり、その監理を行うのがS社と下請けのB建築設計の役割だったと、今回は、ヤツらも頭の整理ができている。

前回の理事会では、B建築設計のM本氏に「(図面は)法令や契約で必ず提出しなければならないものではない」と言われっぱなしで、悔しい思いをした妻は、まずは管理会社であるS社の担当K青年(進行兼補佐役として、理事会への出席は必須だ)に詰め寄り、「図面は契約上、提出すべき書類でした」と認めさせたらしい。

僕たちのマンションの大規模修繕完了後にS社に入社したK青年だが、彼は基本的にはさわやかな好青年であり、大規模修繕については、当然ながら、直接には何も知らない。勘ぐれば、S社は、「責めにくく」なおかつ「攻めにくい」人物をわざわざ担当にあててきたと思えなくもない、が、そこはあえてクールに、
「大規模修繕工事の監理が行き届いていなかった責任として、金銭的な賠償をお願いします。」
と、申し渡したのだとか。

前回11月の理事会でも、下請けのB建築設計に、一応ではあるが、落ち度は認めさせていた。それに加えて妻が言うには、
「あたしたちが契約書のことを持ち出してから、あっちの態度が変わった気がする。やけに下手に出るようになってきた。」そうなのだ。

実は今回の理事会に際して、管理会社のS社は、
『大規模修繕時の監理が行き届いていなかった責任をとって、現行の管理費を減額するということでいかがでしょう』
との補償案を、事前に打診してきていたらしい。

「痛いところを突いたんやと思う。契約書に書かれているんやから、あっちは責任逃れ、でけへんもん。」

だが、
「管理費の減額って、S社との管理契約を続けさせるのが目的としか考えられへんやん。しかも、それだけ減額できるくらい、管理費の値段設定がもともと高かったってことなんちゃうん?!」
少々の管理費減額案は、逆に妻たちをイラつかせる内容でしかなかったようだ。
S社(とB建築設計)に対しては、
「とにかく賠償はしていただけるということで。内容については、管理費の減額では金額算出の根拠も分かりませんし、検討し直してください。」
と畳み掛け、続いて提出されていない図面についてはどうするか。

これに関しては、まずはK青年から、次のような提案があったそうだ。
「図面は紛失してしまっています。今更提出されても、その信用性も疑わしい。図面は『ない』との前提で、こちらのデメリットを解消させる交渉を進めてはいかがでしょうか?」

このように言われると、マンション側に寄り添った話のように聞こえるが、要は「総タイルの5年保証を受け入れて、それで手打ちにしてはどうか」との内容。それでは、K山理事長が持ち帰った補償案から一ミリも進んでいない。しかもS社は、奴らが予想していた通り、「図面を提出しない」方向の話を出してきた。

対して、
「その条件では困ります。それに基本的に、図面がないのはイヤなんです。」
と譲らないのがY子さん。

図面の重要性を理解しつつあるI子さんと妻にとっても、「タイルの5年保証」だけでは問題は解決しないのは明らかであり、この手打ち案は、到底受け入れられるものではない。

「図面が無いのに、どうやって代金が算出できたんかも分からへん。図面がなんで提出されへんかったか、C技研は、いつからそれを知ってったんかも、説明してもらいたいやんか。だからさ。」

次回理事会には、聞き取り調査のためにC技研の担当者を呼び出すことを、K青年に承知させたらしい。マンションの住民にも理事会への参加を呼びかけ、皆に分かるように説明してもらう。それから、監理の仕事を怠ったS社の責任で、施工不良問題に取り組むよう、S建設に交渉すべし。

「今回は、けっこう攻めることができたと思う。」
ビールを飲み干しながら、妻は満足そうにつぶやく。

「それから、前期の理事のことなんやけど…。」
妻によると、この理事会の席でもうひとつ明らかになったのが、前期の理事会運営のまずさだったらしい。

この春まで、大阪市内のマンション(50戸)で管理組合の副理事長をしていました。昨年の理事の引き継ぎ直後に、その前年に行われた大規模修繕の竣工書類のうち、タイルの補修図面が提出されていなかったことが判明。施工会社に「ゴンドラを掛けての図面復元」を確約させるまでのやりとりや、その間に判明した様々な問題について、オットの目を借りてお伝えしたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

アーカイブ