【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その72】奇跡の自主管理―西京極大門ハイツに学ぶ(その3)

■住まいのニーズに合わせた改修工事で資産価値向上

今回は西京極大門ハイツの改修工事の取り組みについてご紹介します。
以下、『 』は佐藤理事長の配布資料からの引用です。

『マンションの建物配置やデザインは建築後42年の年月を感じさせるが、エントランス回りも改修工事が行われて一新されている。この10年間の工事費総額は4億6,782万円に上る。隣接地の買収費用も含めると6億円を超えるが、銀行借り入れは無い無借金運営な上に2018年度には四回目の大規模修繕工事を行う計画をしている。

過去10年間の工事実施状況
2010年度 隣接地買収・建物改修
      エントランス改修工事
      住戸玄関扉交換
      第三次大規模修繕工事
 2009年度 共用廊下増設工事
       住戸分電盤改修工事
       ホール改修工事
 2010年度 共用廊下等バリアフリー改修工事
       屋上換気扇交換工事
 2011年度 住戸窓ガラス交換工事
       共用灯LED化工事
       住戸給水管敷設替え工事(~2015)
 2012年度 共用給水管敷設替え工事
       住戸電気容量改修工事  
       エレベーター耐震機能付加工事
 2013年度 第7次鉄部塗装工事
       テレビドアホン交換工事
       外断熱工事
       太陽光発電設備設置
 2015年度 屋上防水トップコート塗り替え工事
 2016年度 コミュニティホール整備工事
       共用廊下長尺シート敷設替
 2017年度 加圧給水設備改修工事
 2018年度 第4次大規模修繕工事 』

老朽化した建物の機能回復を図る、外壁等の大規模修繕工事(10年毎)や鉄部の塗装工事(5年毎)を定期的に行うことは、当然のごとく行われています。
驚くべきことは、バリアフリー化、認知症高齢者の増加を見越してオール電化のための住戸電気容量の増加工事、インターホンのテレビドアホンへの変更工事、エレベーターの耐震機能付加、電気自動車の普及を見越しての充電設備準備を行う等、マンションの資産価値を向上するための先進的な機能をどんどん取り入れていることです。

さらには管理費の節減や管理組合収入の確保に資する、高圧一括受電、共用灯のLED化、太陽光発電設備、隣地買収による駐車場の増設や銀行ATMコーナーの賃貸し等を次々実践しておられます。

私が一番驚いたのは、外壁の外側から断熱材を張り付ける外断熱工事を行い、窓の遮音性と断熱性を向上させる真空サッシを全戸の窓ガラスに採用していることです。

国内のほとんどのマンションは、部屋の内側に断熱材を張り付けるコストの安い内断熱工法です。内断熱だと外壁のコンクリートは太陽熱を吸収し高温になりますが、欧米では当たり前の外断熱だと外壁の温度が上がらず、真空サッシとの相乗効果で、結露もなく快適に暮らせます。冷暖房効率が格段に向上します。組合員の日常生活に関わるコストを下げるために、管理組合が多額の費用を負担して、ここまでのバリューアップをした例を私は聞いたことがありません。共用部分をバリューアップして毎月の光熱費が下がれば、管理費を値下げしたのと同等の意義があるのです。そしてこのことは資産価値の向上に直結します。

100万円の住宅ローンを30年の長期で返済すれば毎月の返済額は約3千円です。毎月6千円の光熱費が削減できればマンションの価値が約200万円アップしたのと同じだということです。
まさに奇跡の自主管理です。委託管理では管理会社からこんな発想はとても期待できないと思います。

西京極大門ハイツでは、貴重な管理組合資金を有効に使うために工事業者の選定も工夫されています。
佐藤理事長から発注の極意をお聞きしました。(発言の内容メモをもとに佐藤理事長の趣旨を筆者がまとめたものを記述します。)

「複数の業者の見積もりを徴収するにあたっては、建通新聞などの入札公募を活用しています。この手の業界紙は無料で入札公募情報を掲載してくれるのです。心掛けていることは、統一の仕様に基づき最安値を提示した業者を選定するという原則を明示することです。工事業者にプレゼンテーションはさせません。営業マンや会社の経営者の話を聞いてもみんな良い話しかしませんし、選択の基準が恣意的にならざるを得ないからです。営業トークは業者選定の判断には不用なのです。工事はしっかりした現場代理人がいればちゃんと仕上がります。
そして大切なことは、管理組合の予算が幾ら幾らしかないからと言って、業者の提示価格を値切らないこと。管理組合の都合で行った設計変更や追加工事にはきちんとした料金を支払うことです。誠実な付き合いを重ねてゆけば、工事業者も無駄な経費を見込む必要がなく、安心して提示価格も含め誠実な対応をしていただけるようになります。」

これが40年以上の運営を重ねて管理組合が見出した工事業者との付き合い方なのでしょう。管理会社やコンサルタントへの不当なリベートなど入り込む余地はありませんね。

次回は、西京極大門ハイツ独特の細分化された会計勘定区分に基づく、収入と支出使途について取り上げる予定です。

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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