【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その72 】奇跡の自主管理―西京極大門ハイツに学ぶ(その4)

■財布に仕切りを入れるだけでお金に対する感覚は違ってくる

今回は西京極大門ハイツの会計についてご紹介します。

以下、『 』は佐藤理事長の配布資料からの引用です。

『修繕工事にとどまらず、グレードアップ工事を可能としている会計は、どうなっているのだろうか。管理費や修繕積立金は、どれぐらいなのだろうか。様々な取り組みのために管理費・修繕積立金を高くしようとすると、不平不満・反対意見が出てくる。加えて、マンションは流通市場の中にあるため、管理費等が高くなると売買に影響を与える。

「取り組みはしたいけれど先立つものがない。」現状の中で立ち止まっている管理組合は多い。会計の原則は単純明快で「出を制し、入りを確保する。」に尽きるが、単純に支出を抑制し、収入を確保するために値上げをしたらよい訳ではない。収入を確保するための手法は様々であるが、区分所有者に納得してもらうためには、状況を説明しやすいように区分けをすることが第一歩になる。総額は変わらなくても、財布に仕切りを入れるだけでお金に対する感覚は違ってくる。

一般的な管理組合では耳慣れない名称の会計区分がある。

①管理費会計 ②短期修繕積立金会計 ③長期修繕積立金会計 ④保険会計 

⑤環境整備積立金特別会計 ⑥コミュニティ委員会会計

管理費会計は、日常的な管理や清掃費、水道光熱費、設備保守、管理組合運営費用を賄う会計で、管理費収入が91パーセントを占めている。

短期修繕積立金会計は、管理費の1割に相当する額を「短期修繕積立金」名称で賦課しているほか、駐車場代を除き、駐輪場等敷地内の共有施設の使用料や、共有地や建物に設けられたアンテナ設備の賃貸料が主な財源になっており、日常的な小規模修繕に対応している。

長期修繕積立金会計は、一般的な修繕積立金に対応しており、修繕計画に基づく修繕工事費に使途が限定されている。

保険会計は、管理費会計から財源を繰り入れして、5年毎に更新される火災・地震等のマンション総合保険や居住者を対象とした個人賠償責任保険料の支出に備えて、毎年積み立てを行って、年度間の支出額の平準化を図っている。

環境整備積立金特別会計は、駐車場代や管理組合所有の土地・建物の賃貸料収入などの収益事業収入が財源となっており、事業のための支出のほか、隣接地の買収費などの特別会計事業を担っている。

コミュニティ委員会会計は、コミュニティ活動の参加費等の収益に加え、年間30万円を限度に管理組合が助成できる仕組みになっている。財源は住んでいる人が払う駐輪料の一部を充当している。区分所有者が負担するマンションの管理費用である管理費ではなく、居住者が負担する駐輪料が出所という形にしている。

会計別では、①管理費会計(繰出金で賄っている④保険会計を含む)と修繕積立金会計(②の短期+③の長期)、⑤環境整備特会の割合を収入ベースで比較すると管理費会計25%、修繕会計48%、環境特会27%となっており、収入に占める管理費・修繕積立金の合計割合は69.7%で、その他収益事業収入が30.3%。

1戸平均の月額の管理費・修繕積立金は15,351円で、類似マンションと比較すると総額では、ほぼ同一水準に納まっており、駐車場収入や収益事業収入を管理費会計や修繕積立金会計に入れずに運営できているため、環境特会が受け入れられることに繋がっている。』

資料によると、毎年の管理費の余剰は平均して管理費の2か月分に相当するそうです。世の中のほぼ全てのマンションでは管理費の余剰は次年度の管理費勘定又は修繕積立金勘定に繰り越していると思います。なんと西京極大門ハイツではこれを区分所有者に返還しているのです。

管理費の不足が生じた場合に強制徴収するのであれば、余った時には返金すべきだとして、管理規約を変更したのだとか。

佐藤理事長の資料には以下の説明があります。

『余剰金の多くは管理会社への総合委託から自主管理に移行したことによる経費差から生じており、将来再び委託管理に移行しなければならない状態になった場合に備え、復元力を保留しておくとともに、自主管理の果実を配当として還元するといった意味合いもあり、会計間の独立性を保つとともに、管理組合の運営に関心を持ってもらうことにつながっている。』

このような細分化した会計処理ですが、管理組合が独自にエクセルで構築した会計ソフトで簡単に行えるそうです。会計ソフトまで管理組合が自前で作り上げたことは驚きです。管理会社では発想しえない工夫も凝らされています。

皆さんのマンションでは滞納者に対する延損害金はどうされていますか?

多くのマンションでは悪質な長期滞納者に対して、都度理事会の決定をもって遅延損害金を付した請求をしているのではないでしょうか。

西京極大門ハイツでは滞納者に対して、常に遅延損害金を付して請求しているそうです。しかも管理組合の会計ソフトはとても秀逸で、支払日に応じた遅延損害金を明示しています。支払日が一日遅れるごとに、刻々と増加する遅延損害金を一覧で示しているのです。支払いが遅れればそれだけ負担が増えるという、当然のことを滞納する組合員に示すことで、滞納を抑制し、早期に支払いを完了する動機付けになるのだそうです。

管理費等の請求も厳格に行い、会計基準に基づき厳格に仕切られた会計処理を行う。勘定間の繰越は安易に行わず、管理費の余剰は還付して、組合員の協力のもと成し得た自主管理の果実をみんなで分け合う。経営的視点に基づく経済合理性の面でも奇跡の管理組合運営だと脱帽です。

次回は管理組合の運営組織と役員選出の考え方についてご紹介したいと思います。

 

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

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