【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その86】区分所有法には理事長という言葉は登場しない!?

意外なことに、区分所有法にもマンション管理適正化法にも「理事」や「監事」の定めはありません。
理事の定めが無いのですから、「理事長」の定めも当然ありません。

これらの役職は、実は国土交通省の定めた標準管理規約に登場する用語なのです。標準管理規約では理事会や監事に関する規定に並んで理事長の規定があり、「理事長は区分所有法に定める管理者とする」と定めています。管理組合を代表する最高責任者は法律では「管理者」と呼ぶのですね。

みなさんの分譲マンションでも、理事と監事を総会で選出し、理事の互選で理事長を選任していると思います。これは標準管理規約に倣った管理規約を定めているからなのです。標準管理規約に関する国土交通省のコメントには、「この標準管理規約で示している事項については、マンションの規模、居住形態等それぞれのマンションの個別の事情を考慮して、必要に応じて、 合理的に修正し活用することが望ましい。」とあり、いわゆる標準的なマンションの管理規約のひな型を示したに過ぎないことを表明しています。この通りの規約で無いからと言って、法律違反であったり無効というわけでは無いのです。

ついでながら、区分所有法では「総会」という言葉も登場しません。管理規約に定める「総会」は、区分所有法では「集会」と呼ぶのです。つまり標準管理規約では、理事会を設けた場合の理事が構成する会議を理事会と呼び、理事会に対して組合員全員が構成する会議を総会と呼んでいるのです。

理事会を設けないマンションも当然に適法に存在します。例えば総戸数10戸の小さなマンションの場合、一般的なマンションのように総会で理事を5名、監事を1名選任し、理事の互選で理事長を選任することがはたして必要でしょうか。理事会を開いて総会の議案を審議し、理事会の2週間後に総会を召集したけれど、役員以外には誰も出席しなかったといったケースも容易に想像できますね。それならば理事会は省いて組合全員で「集会」を開催し、集会の決議でどなたかを「管理者」に選任し、理事会によることなく管理者に管理組合の運営をお任せする方がいいと思われませんか?

この場合でも、全てを管理者が決定するわけではありません。規約で定める重要な事項を集会議決事項と定めて、集会の席で組合員の意見を集約し、決定したことを執行してもらうのです。毎回すべての事案を集会を開催して決するのが面倒なら、事案ごとにアンケートで組合員の意見を集約し、これを反映した運営を管理者に委ねればいいのです。

もっとも、区分所有法により集会の普通決議、重要事項決議及び建て替え決議が必要と定めている事項は、集会による所定の議決要件を満たすことが必須です。しかしながら、これ以外の事項は集会決議で必ずしも決する必要が無いのです。使用細則の設定や変更(規約に記載すべき事項と定める内容は除きます)、予算審議(予算の修正を含む)などは意外にもアンケートやSNSの意見を集約して管理者がこれを決するとしても問題ありません。

標準管理規約は、総会で理事を選任し、理事の互選で理事長=管理者を選任する「間接民主主義」を採用しています。一方、区分所有法は、「直接民主主義」を前提に管理組合を運営することを想定しているのです。どちらが良いとか悪いとか言う話ではありません。それぞれのマンションの特性にふさわしい規約を設定して管理組合を運営すればよいのです。

ちなみに区分所有法はとてもよく考えられていて、規約を設定していないマンションでも管理運営を行うための必要な定めは、基本的に法律の中に規定されているのです。

「この部分は、法律の定める以外のことを管理規約で定めても無効になります。」
「これについては、管理規約で別の定めをしてもいいですよ。」

などなど、基本的な事項を押さえつつ、管理規約をそのマンションにふさわしい内容に設定できるような仕掛けがあちこちにちりばめられているのです。

さて、それでは区分所有法が定める「管理者」って何でしょうか?

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。

匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その86】区分所有法には理事長という言葉は登場しない!?”

  1.  管理者が複数いるマンションの例があります。 主に複合用途マンションで、多いマンションでは管理者は4名だそうです。 内訳は店舗部分の管理者、事務所部分の管理者、住居多数派(主流派)の管理者、住居少数派(反主流派)の管理者だそうです。 それぞれの管理者が、自分たちの有利な主張をし、収拾が付かないそうです。 確かに住戸部分だけのマンションで1棟、100戸くらいまでなら、互いの譲歩を引き出せれば、極端なもめ事を発生させずに済みます。
     しかし団地型やタワー型や複合用途型なら、それぞれの思惑が調整できず「管理不全」に陥りやすくなります。 そんな火中の栗を誰が拾うでしょうか? 私は拾いたくありません。

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