【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その87】責任の重い管理者業務を他人に任せられないだろうか?

皆さんは「第三者管理者管理方式」という言葉を聞いたことありますか?

役員を選任し、理事の互選で理事長を選任し、理事長が区分所有法上の管理者となるのが通常のマンションの管理形態です。しかし、何らかの理由で理事の選任が困難なマンションや、住戸数の少ないマンション、超高額マンション等では、組合員以外の個人や法人を区分所有法上の管理者に選任して管理を任せたいという場合があるでしょう。組合員以外の者(個人または法人)を管理者に選任するのが第三者管理者管理方式です。

第三者管理者管理が望まれるのは、以下のようなケースです。

  1. 居住する組合員がほとんどいないリゾートマンション。組合員は遠隔地に居住している。
  2. 高経年マンションで役員のなり手がいない。役員の定数を満たさず、役員の欠員を補充できず、役員のなり手はいつも同じ。
  3. 総戸数が少ないマンション。理事会の顔ぶれと総会の顔ぶれがほぼ同じ。理事を選任しなくても、総会で全員が直接議論すればよい。
  4. 超高額マンション。高額マンションの組合員の社会的地位や保有資産の状況を考えると毎月理事会を開催して、経常的な小修繕の決済や日常管理の問題を、理事が貴重な時間を割いて都度集まって議論するのは現実的でない。誰か信頼できる先に委ねて、その報告を受けることとしたい。

この中で、高経年マンションで役員のなり手がいない場合は、管理規約を工夫し理事の選任規定を緩和してはどうでしょうか。一定の組合員の親族であれば、組合員でなくても理事に選任することができるよう管理規約を変更するのです。更に理事の代理人(理事の一定の親族に理事職を委任できる等)の理事会出席を認めて、柔軟な運用ができるよう管理規約を変更すれば、理事のなり手不足を乗り切れるのではないかと私は考えます。

さて、管理者の適任者は誰でしょうか?特定の組合員でしょうか?それともマンション管理士のような専門家でしょうか?はたまた、マンションの管理会社でしょうか?

特定の組合員にせよ、マンション管理士にせよ、個人が管理者となり、管理組合の運営を全て任せることに、私は反対です。大型マンションにおいては、管理組合の資金残高が数億円にもなる管理費や修繕積立金の口座の名義人に個人がなることに、重大な懸念があるからです。ところが、先に述べた通り、これは理事会を置き、理事の互選で選任された理事長=管理者においても同様に懸念されることです。

実は、理事長が引き起こす金銭不祥事は日常的に頻発しているのです。しかし、その多くは表沙汰になることはありません。理事長個人が管理組合の資金を使い込んだ場合、刑事訴追したとしてもまずこれが還ってくることは無いのです。表沙汰になり、実名報道されれば多くの資金を失った事故マンションだとレッテルを貼られ、マンションの市場価値がガタ落ちとなるからです。

ですから、理事長やマンション管理士が管理者に就任する(理事長は多くの場合既に管理者なのですが)なら、相応の個人資産を持っていることを条件とすべきなのです。保有する不動産を担保提供していただくなり、それなりの資産を持つ方に連帯保証人になっていただければ理想ですが、残念ながら現実的にはまず不可能でしょう。しかしながら、ことほど左様に重要かつ深刻な問題であることをご理解いただきたいと思います。

それなら、管理会社は理想の管理者となりうるでしょうか。

国土交通省のネガティブ情報サイトでは、管理会社の金銭不祥事が多数アップされています。管理会社の金銭不祥事は、管理組合からの内部情報やマスコミの報道をもとに国が調査を行い、不正が認められればマンション管理適正化法の規定に基づき処分が下ります。

理事長の犯した金銭不祥事と異なり、管理会社の犯した金銭不祥事の多くは、不心得社員の行為によるものであり、その殆どは管理会社により弁済されています。もっとも、管理会社の倒産を伴うような金銭不祥事が起きる可能性もありますから、確実に弁済される保証がある訳では無いことは言うまでもありません。

比較的安全に思える管理会社による管理者就任ですが、金銭不祥事よりも重大な問題を実は孕んでいるのです。

それが利益相反問題です。管理会社=管理者は、管理業務や修繕業務を発注する立場であり、同時にそれを受託する側なのです。お手盛りで、管理会者=管理者が管理会社を相手に、修繕や工事の取引を好き勝手に進められる恐れがあるのです。事実、大手の管理会社の中には、小規模マンションやワンルームマンションを中心に、積極的に自社を管理者に就任させることを管理規約に明記している事例があります。

そして、管理者の立場を得た管理会社は、様々な修繕工事、損害保険契約、台風被害復旧、大規模修繕工事、インターネットサービスプロバイダー、電子ブレーカーやLEⅮのような省エネ工事に至るまで、ありとあらゆる管理組合の取引先を、管理会社または管理会社の関連会社に特命(同業他社と比較検討しないで、一社決め打で発注すること)で発注するのです。

総会は形式的に開催されますが、出席する組合員もわずかです。ましてや、これに異議を唱える組合員などほとんどいません。多くの第三者管理者方式の総会は、会場への出席者が誰もいない中で委任状と議決権行使書によって全会一致となり、すべてが決まってしまうのです。第三者管理者方式が組合員の管理に対する関心を遠ざけて、いわゆる愚民政策の仕組みとして機能していると言えるでしょう。

横暴な第三者管理者管理を止めさせるため、管理委託契約を解除しようにも、管理会社の管理者たる立場を同時に解任する必要があるのです。この場合は、規約に明記された管理者=管理会社の規定を変更しなくてはなりません。理不尽にも管理会社の巧妙な罠にはまった管理組合は、規約変更決議が必要となりますが、組合員間の意思疎通が、このようなマンションでは全く期待できそうもありません。

この作業を、第三者管理者管理の問題点に目覚めた一部の組合員だけで進めることは、まずもって不可能です。結果管理会社の専横はどこまでも続くのです。

これでは第三者管理者管理など、夢のまた夢ではないですか。良い解決策は無いものでしょうか…。

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

3 thoughts to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その87】責任の重い管理者業務を他人に任せられないだろうか?”

  1.  各種の騒動を見ていて、第三者管理の理想形は、理事長はあくまで管理者、監事をマンション管理士等が分担する方法です。
     マンションはあくまで区分所有者が主体でなければならず、理事長の管理者の立場は守らねばなりません。 理事長は管理者としての絶対的権力を持っていますから、信義誠実の原則、善良な管理者として注意義務を負わねばなりません。
     しかしその事を理解している理事長はほとんどおらず、横領、癒着等に目のくらんだ連中は、いとも簡単に「シロウト」を騙せます。
     そこで、監事は目を光らせ理事会と適度な緊張関係を持ちながら、管理運営を監査しなければなりません。
     マンション管理士等が監事に最適な理由は、そこにあります。
     ところが、マンション管理士も理事長と同じで、「カネ」に目のくらんだ連中は、悪事を働きます。
     しかも専門的知識者ですから、資格を信用してしまいます。
     私も何人かのマンション管理士と知り合いましたが、それを理解している連中は少数です。
     マンションは、誰が偉いわけでもなく、水平の世界です。
     しかし、法体系や管理規約は縦の関係(上下関係)になっており、調整は困難です。
     それでも、諸法令等には従わねばならず、工夫が求められます。

  2. 次回のコラムで私なりの解決策策を提案したいと思います。
    ご期待ください。

  3.  管理会社は長年の丸投げ等がたたり、実力を失っています。
     理事会も、信義誠実の原則、善良なる管理者の資質を理解していないところがあります。
     次回を期待しています。

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