国土交通省の標準管理規約は、時代の移り変わりを反映して何度か改定を繰り返してきました。近年では民泊問題をどう扱うのか、多くの管理組合で管理規約の改定を含めた議論が盛り上がったものと思います。
管理組合の実情を踏まえて、管理規約の変更を行うケースは多いと思いますが、多くの場合、管理会社に管理規約変更の文案を無料で作成してもらっているのではないでしょうか。
原始規約における問題点を前回コラムで指摘しましたが、管理会社は、自分がせっかく掘った落とし穴を自ら埋めるような提案などするはずもありません。タダほど高いものは無いのです。管理組合が独自の判断で改訂すべき内容を規約に盛り込んでいくことが重要です。
管理組合の目線で、現行規約の問題点をチェックできる専門家(マンション管理士等)を有効に活用したいものです。しかしながら、管理規約の改定に関する十分な経験と技量を有する専門家がまだまだ少ないのも問題です。
私なりに管理規約を変更する場合のチェックポイントや意見を整理してみました。
①標準管理規約と相違する条文は、明確に納得できる理由があるか確認する。
標準管理規約は国が示す参考規約にすぎません。とはいえ比較すれば、管理会社有利の落とし穴が透けて見えるケースもありますので、比較検証する必要があると思います。
②役員の選任規定を柔軟に規定する。
これは以前のコラムでご説明した通りです。https://schoolformkk.com/kanri-shuzen_column/1766/
③組合員の総会招集要件を見直す。
組合員が管理組合の運営に要望がある場合には、理事に申し出て理事会で審議していただくのが一般的な手順です。しかしながら、理事会の決定や方針に賛同できないとなれば5分の1の組合員が連名で、議題を示して理事長に総会を招集するよう要請することが可能です。(理事長が要請を無視して総会を招集しない場合は、総会の招集を要請した組合員が総会を招集することとなります。)
この5分の1という数字は、管理規約で緩和することが可能なのですが、ほとんどの規約は区分所有法の定めをそのまま踏襲して5分の1としているのです。区分所有法が制定された当時は、大規模な超高層マンションなど想定外だったはずです。数十戸の小規模マンションならば5分の1の組合員の賛同を募るのは容易かもしれませんが、例えば500戸のマンションだと100人の組合員が賛同しないと総会を開催できない、となります。これは現実的ではありません。一定の組合員が「○○を総会で議論したいと意思表示した場合には総会で審議できる。」という区分所有法の精神に実効性を持たせるためには、マンションの規模や特性に応じて必要な修正を加えるべきと思います。
④理事長を総会の議長に選任しない。
理事会が作成した総会議案を理事長が説明し、理事長自ら議事進行を行い、反対意見や質問に答弁し、意見が紛糾しても限られた時間になれば打ち切って採決せざるを得ない。なんだか独演会みたいになってしまいますね。総会の議長は現に総会に出席した組合員の中から、出席した組合員の多数で選出してはどうでしょうか。
⑤議長宛て委任状は出席組合員の意見に賛成として扱う。
多くの議長宛ての委任状が集まると、総会で議案を審議する前から可決することが明らかな場合も多いと思います。理事会が想定しなかったような問題が総会に出席した組合員から指摘され、総会出席者の多くがその意見に賛同して議案に反対した場合でも、委任状がものを言って原案通り可決してしまうという珍現象は回避しなくてはなりません。議長への委任状は、理事会の議案に賛成として扱うのではなく、総会に現に出席の組合員の多数意見に従うとすれば如何でしょう。
細かく見てゆけばまだまだ気になることがあるでしょう。細部にわたる検討は、管理組合の実情や要望に沿う形で修正する必要がありますので、画一的なアドバイスをするには限界があります。やはり専門家と協議しながら作り上げてゆく必要があると思います。
次回は規約変更の失敗例を紹介してみたいと思います。
総会の議決権行使書は、自主管理のころ、世間に広まる2年程前から使っていました。 全員同意の建て替えを実現するため、単純に委任だけでなく、区分所有者の意思を確認するためでした。 今では、その精神が失われ、管理会社の怠慢の原因になっています。 総会は株主総会と同じで、事前に結果は決まっています。 その前の理事会等で、何度も意見聴取をし、ほぼみんなが納得し、正確な判断をしない限り、マンションに未来はありません。
7月5日付コラムNO70でご紹介した通り、西京極大門ハイツでは、議決権行使書をあえて配布しないで総会を運営するそうです。
①組合員が現に出席することが原則。
②どうしても都合のつかない人は自分の考えと同じ意見の組合員又は代理人として規約が認める人に委任。
③②の該当代理人がいない場合は議長委任。
④あえて私製の議決権行使書を提出する人は事前の手段として出席扱い。
議長は委任された議決権を出席者の多数意見に賛成に投じることで、事前に結果の決まる総会ではなく、議論の末多数の意見結果が決まる運営だと聞きました。
更にその前提として、日頃のコミュニティーの活性化を通じて意思疎通が図れているため、総会で議論が紛糾することもないと言いますから驚きです。
器用人さんのおっしゃるように「ほぼみんなが納得する正確な判断」のために管理規約の内容以上に理事会がこれをどう運用してゆくかが重要だと思います。
マンション管理は経験上、試行錯誤の繰り返しです。 これが正解はありません。
マンションごとに、違憲状態が許容される場合すらあります。
バレると大問題に発展しかねませんが、人間関係が良好で、理由が地域の実情に合っていれば、全員は無理でも大多数の方は納得いただけます。
マンション管理センターもそのことには気づいており、最近の基礎セミナーでは、少数の正しい意見をクレームとして処理し、クレーマー扱いしていると認識しています。
法は人のためにあり、人の為にならない法は、改正されるべきです。
当面の違法状態には「郷に入れば郷に従え」の考え方をすると楽になります。(笑)