【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その88】理想の第三者管理者管理方式を模索する

理事長にしてもマンション管理士などの専門家にしても、個人が管理組合資産の名義人となるのは不適切であるのは先に述べた通りです。それならば、管理規約に工夫を凝らして、管理会社を管理者に選任して管理組合資産の名義人となってもらってはどうでしょう。(利益相反の問題は後で説明いたします。)

管理会社が管理者に就任する場合や管理会社自らが区分所有者の場合は、実はマンション管理適正化法の管理会社に対する管理組合の資産管理に関する規制は適用されず、管理者として全ての組合資産の預金口座、証券等の名義人に適法になり得るのです。

管理会社を管理者に選任して組合資産の口座名義人とする場合、上場企業や信用力のある大手系列の、つまり倒産することがまず無いと判断できる管理会社を選ぶことが肝心です。オーナー企業や中小規模の管理会社を管理者に選任するのであれば、十分な担保を取るなり、十分な個人資産を確認した上でオーナー社長の個人保証を取り付けるなどの保全策が必要と思います。

その上で利益相反問題を解消する必要があります。その為には、管理会社が担当する管理者業務を管理組合資産の管理に限定するのです。管理費や修繕積立金の収納、保管、支払いの代行、滞納管理費の督促、決算事務、予算案作成等、会計、出納に関する業務に限定すれば利益相反の問題は生じません。
利益相反となる可能性のある日常の管理運営業務、建物の維持保全業務、修繕業務等は今まで通り管理組合理事長を管理者として選任し、担当してもらうのです。

管理会社と理事長の職務分掌を明確に規定し、資産管理担当の管理者と維持保全業務担当の管理者としてそれぞれを選任すのです。総会の招集や訴訟の遂行などはどちらが担当しても良いと思いますので、管理規約でどちらの管理者の職務とするかを規定すればよいでしょう。

それでは、理事会を構成することが困難な管理組合ではどうすればよいでしょう。

この場合は資産管理担当の管理者を管理会社とし、維持保全業務担当の管理者にはマンション管理士などの専門家を任命すればいいと思います。マンション管理士などの専門家は管理者になってほしいと管理組合から要請を受けるケースがしばしばあるのですが、実は最大の障害がこの管理組合資金の管理に責任が持てないということだったのです。

維持保全業務担当の管理者と資産管理担当の管理者の職務遂行状況は、組合員と監事を通じて監視することとなります。両管理者がなれ合うことの無き様、職務の執行内容をきちんと組合員に報告させ、業務を監視し、必要に応じて集会で説明を求め、管理不全や背任行為があればいつでも解任しますよと牽制する緊張関係こそが必要です。

両管理者の職務に何らか疑念があれば、集会を組合員によって容易に直接請求できる事がこのケースでは重要になります。組合員による総会の直接請求の要件はほとんどの管理規約で、区分所有法に定める通り、組合員の5分の1の要請でこれを行うこととなっています。しかしながら、500戸の大型マンションで100人もの同意を取り付けるなど事実上不可能です。区分所有法はこの部分を管理規約でもっと緩和してもいいですよと示唆してくれています。これを大幅に緩和し、例えば100分の5とか、5名以上といった規定に変更してはどうでしょうか。こうしておけば両管理者に何等か疑念があればすぐに集会を組合員の要請で開催できますね。

両管理者には管理者委嘱の条件として、管理組合に対する背任行為、利益相反行為を行った場合のペナルティー条項(損害賠償の予約条項)とその場合の違約解約条項を厳密に盛り込んでおけば更に安心だと考えます。
第三者管理者管理方式の課題を解決するための試案を今回まとめてみました。国(国土交通省)、法学者、管理組合、マンション管理業者、マンション管理士等の専門家等のそれぞれの立場を超えて今後本件の議論と研究を深めていただき、第三者管理者管理方式が管理組合の運営手法として有効に機能することとなるよう切に願います。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その88】理想の第三者管理者管理方式を模索する”

  1.  実際問題として、正確な情報が無いと、マンション管理士でも管理会社の不正は見抜けません。
     自分自身の財産、マンションみんなの財産、地域のいざという時のための財産等マンションには多くの役割が求められ、所有形態も不動産管理信託が加わると、今の管理規約では対応できません。
     「一点物」のマンションの自覚をもって対応されるよう望みます。

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