- 【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その33】元請業者・下請業者・同業者、それぞれの『掟』(その1) -
建設業を代表とする請負業では、元請(発注者~ここで言う管理組合~から直接仕事を引き受ける会社)、下請(元請から仕事を受ける会社)、更には同業者との間で、お互いが「鉄の結束」で守り続ける『掟』があります。
それぞれの立場で自分の利益を守るために作り上げられた掟だからこそ、掟を破る者はいないのです。
一般の方々から見ると、なんだか不思議な世界ですが、世の中は目に見えない不思議な掟で秩序が守られていることを知ると、いろいろなことが見えてきますよ。
1.元請業者の掟
- 営業活動は元請が行い、顧客(管理組合)との仕事の範囲や仕様、契約金額の決定は元請の責任で行う。
- 顧客と元請のトラブルは元請が解決する。例えば仕事の出来栄えが悪いと顧客が難癖をつけて支払いを拒否しても、元請は下請けに約束通り支払わなければならない。
- アフターサービスも元請がすべて責任を負う。下請に責任を負わすことは契約上当然(防水工事の保証は元請が顧客に、下請は元請に対して行う。)だが、下請が倒産した場合は、元請の費用で保証を履行しなければならない。
- 仕事を紹介してもらった先には求められれば謝礼を渡す。相手は管理会社、管理組合理事長、修繕委員長、コンサルタント会社、設計事務所、マンション管理士などなど。謝礼のルール(例えば請負金額の○○%等)を書面で取り決めているケースもある。
2.下請業者の掟
- 顧客(管理組合)から直接、仕事の範囲や仕様、契約金額について相談されても、一切かかわってはならない。すべて元請を通して決定してもらわなければならない。
- 顧客(管理組合)から下請の契約金額や材料の価格等を尋ねられても、一切回答はしてはならない。
- 下請業者がどこのどういう業者か顧客(管理組合)から尋ねられても、元請の了解なしに答えてはならない。「○○会社(元請)の協力会社です」と回答する。(建設業の工事現場では元請、下請、孫請まで現場に係る業者を施主に報告することが行われているが、マンション管理に関する業界では一般的ではない。)
- 下請は、元請から指示があれば、元請の制服や腕章をつけて(時には名刺まで元請の物を持って)業務を行う。下請業者の保有車両の車体にマグネットで元請会社名を表示させることもある。
- 元請を経由して仕事をした顧客(管理組合)から、別の仕事で直接下請に依頼が入った場合は、仕事をお断りし、元請にこの経緯を報告しなければならない。
- 日頃取引のある元請業者から協力見積もり(元請が受注を目指す仕事の見積もりを元請けの提示額より高くした、顧客宛ての受注する意思のない見積もり)の依頼があれば、これに応じる。当然顧客から金額交渉の申し入れがあっても元請の指示通りに回答する。(値引きできないとか、値引きは3%が限界とか…)
- 顧客(管理組合)から直接仕事の依頼を受ける場合、定価もしくは小売価格を提示し、管理会社や建設会社から依頼を受けた場合は卸価格、仕切り価格と呼ばれる安い価格を提示して、元請の利益を確保する。
(オキテ話はつづく)