【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その39】エレベーター会社の掟(敷居と枠が大事)

元大手管理会社取締役_ブログ

エレベーター会社の掟(敷居と枠が大事)

エレベーターは、年1回の法定点検が義務付けられていますが、日常の保守管理は義務付けられていません。現に保守管理契約を締結していないエレベーターは相当数あると思います。
そんな保守契約を結んでいないエレベーターの調子が悪くなったので、設置メーカーの保守会社に出動を要請すると1時間当たり23,000円だと言われたとか。(これは技術者の派遣費用であり、もちろん部品交換などの実費は別です。)

自動車の場合はどうでしょうか。
日本の自動車メーカーは法定の6カ月点検や車検を日頃ディーラー系の整備工場に依頼してなくても、不具合があればいつでも、通常の料金で修理を受け付けていますよね。エレベーター業界とはなんとも油断ならない業界です。

老朽化したエレベーターの全面改修には二種類あります。
①撤去・新設工事
各階のエレベーター乗り場の建物側に埋め込まれている敷居と枠を含むエレベーターのすべてを取り換える工事です。
②全面リニューアル工事
先程の敷居と枠はそのまま残して、籠内の壁や天井、照明などを一新し、モーター・減速機・制御盤を取り換え、籠内と各階乗り場の操作盤を取り換える全面改修工事です。(取り換えないのは敷居と枠、籠本体、昇降路のレール、重りくらいで、あとは全部新品になります。)

日本のエレベーター製造会社は、〇立、○菱、○芝、○-チス、○〇テックといったところでしょうか。これらエレベーター製造会社の間には鉄の掟が存在します。

 

それは、他のメーカーのリニューアル工事は絶対に受注しないということです。

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仮にお客様からリニューアル工事の見積もり依頼があっても、お互いに連絡を取り合い、現行メーカーよりも割高な見積もりしか出しません。いわゆる民製談合です。
業界では既得権のあるメーカーのことをチャンピオンと呼び、敷居と乗降口が残っている限りチャンピオンは永久チャンピオンとして君臨します。そういえば敷居にはメーカーの名前が入っていますね。

設置後25年から30年程度でエレベーターのリニューアルや撤去・新設が検討時期を迎えます。メーカー同士を競わせるのであれば、撤去・新設でないと本当の競争原理は働かないのです。
独立系エレベーターの保守会社は一時、メーカー各社の嫌がらせを受け、部品を販売してもらえないといったことがありましたが、独占禁止法の趣旨が徹底された今、販売しないということはなくなりました。しかしながら、欠品を理由になかなか部品を納品してもらえないというようなことはあるようです。
故障部品が交換できなければ、エレベーターを長期間停止せざるを得ないこともあります。最近ではメーカー各社が部品の価格を上げて、独立系エレベーター保守会社を市場から締め出そうとしているようです。独立系エレベーター保守会社のフルメンテナンス(部品の交換を毎月の保守料に含める)契約が、メーカーが供給する部品の価格上昇で成り立たなくなっているのです。
しかしながら、独立系保守会社の中には、リニューアル工事を積極的に受注する力を持つ会社も出てきました。自前で部品を製造・調達し、すべて新品に取り換えてしまうのです。
最近では、これら独立系のエレベーター保守会社各社に対して、リニューアル工事に必要な、すべてのエレベーターの部品を自社で製造し、ただちに提供するエレベーターに特化した部品のサプライヤーも登場しているのです。
メーカーの多くが自社の制御盤の回路や機能をブラックボックス化している中、独立系の保守管理会社がこのサプライヤーの製品を採用し、取り扱い方法や仕様を全面的に公開する等、誰がメンテナンスを引き継いでも保守管理できる体制をアピールしています。
リニューアル工事で更新した部品の保証期間を5年間に延長するとアピールする猛者も登場しています。

このような消費者目線で業界の改革が進み、独立系保守会社の地位が一層向上することは大歓迎ですね。

 

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