【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その94】エレベーターメーカーの提供するハイテクはホントに必要ですか?

エレベーターの保守会社を、メーカー系の保守会社から独立系保守会社に変更したいと検討する管理組合は多いと思います。

独立系保守会社から見積もりを出してもらうとPOG(パーツ・オイル・グリス)契約で、月額一基たり1万円程度でした。この会社では毎月一度、技術員が現地に来て点検するそうです。

現在お願いしているメーカー系保守会社の契約金額は月額約3万円です。しかし技術者による点検は3カ月に一度。日常的に電話回線でエレベーターの運行状況を遠隔監視しているので、不具合があれば自動的に察知して対応するのだそうです。更に人が籠に閉じ込められた場合には、遠隔操作で扉を自動的に開いて救出することまで出来るとのこと。これはメーカー系の保守会社にしか出来ない独自の機能だそうです。

マンション居住者とすれば「安心は何事にも代え難い」との事で、月額2万円(こちらのマンションでは3基のエレベーターがあるため月額6万円)の出費増は惜しくないとのご意見も多いと思います。
メーカー系保守会社が、技術者の人件費を節約し、メーカーならではのハイテク装置で保守することで高額な保守料金を提示する中で、それでも独立系の保守会社がシェアーを伸ばしている理由は何でしょうか。

独立系保守会社の社長さんと面談する機会があり、いろいろご質問してみました。

『運行を伴う機械装置の不具合は、視覚、聴覚、触感、臭覚といった熟練の技術者の感覚により予見出来たり発見出来たりすることも多いのです。破損や傷がある。異音や振動がある。熱を持っている。焦げた臭いやオイルの臭いがする。・・・・・これらすべてを機械が遠隔で覚知することは困難です。更には、意匠部分の破損や落書き、床タイルの摩耗、照明器具の破損、ドアの敷居のゴミの堆積といった現地に赴くことで報告できる事項は多岐にわたります。最悪のトラブルを防ぐための予防的な保全を毎月実施する私たちに比べて、メーカー系の保守会社は可能な限り機械監視と遠隔操作で対応し、不具合の生じた場合に現地に赴くという考えです。どちらが不具合の生じる確率が高いと思われますか。
メーカー系独立系を問わず多くの保守会社は、出動要請に対して都内であれば30分から1時間程度で技術員が駆け付ける体制を整えています。万一の閉じ込めの場合、救出まで一時間程度を要するリスクをどう考えるかは皆さんの判断だと思います。』

では、どの程度の頻度で閉じ込められるような事態が生じるのでしょうか。私自身、長年マンションに住み続けていますが自宅のエレベーターで閉じ込め事故が発生したことは一度もありません。例外的に大きな地震が発生したときは多数の閉じ込め事故があるでしょうが、保守会社は国の指導で、病院や公共施設などを優先して救出し、マンションなどは一番後回しに対応せざるを得ないようです。エレベーターの走行路が傾いたような場合は遠隔での扉の開放はできないでしょうし、震災時は通信インフラも遮断されますから、遠隔監視も十分機能しないでしょう。

閉じ込め事故の頻度を独立系保守会社の社長さんに質問すると、『閉じ込め救出は100基のエレベーターを保守していたとして、10年間で1度あるかどうかといったところではないですか。』と回答を得ました。もちろん正確な記録に基づくものではないと断られたうえでの回答ですが、感覚的にこの程度とのことです。なんと一基あたりにすると1000年に一度ということです。

毎月約2万円の差額がメーカー系と独立系の保守会社の間で生じているとして、年間では24万円です。1000年なら2億4000万円です。
『エレベーターを30年でリニューアルするとして、差額の累積は720万円。当社であればエレベーターのリニューアルをしてもおつりがきます。』とのことです。万一の場合の1時間のあなたの我慢が2憶4000万円の価値と見合うのかということだと思います。エレベーターメーカーの提供するハイテクはホントに必要なのでしょうか。考え物ですね。

とりあえずエレベーターの籠内に防災ボックスを設置して、飲み水と簡易トイレを用意されてはどうでしょう。

「【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その94】エレベーターメーカーの提供するハイテクはホントに必要ですか?」への4件のフィードバック

  1.  人命の問題をどう考えるかにより決まります。
     関連業界も多いです。
     閉所恐怖症の方は多くないかと思いますが、閉じ込めが起きたときの不安は想像しただけでも恐ろしいです。
     ことに、人間関係が疎遠なこの頃では、同じマンションの人でも不安です。
     簡易トイレ等の設置は必要ですが、その他の過剰な設備と思えるものは、いらないかなとも思います。
     エレベーター業界は、マンション管理業と相性が良く、もっと研究すれば良いのにと思います。
     非常時対応を考えると、捨てたものではありません。
     なお、メーカー系の独立系向けいじめは、形を変え、今もあるようです。

  2.  エレベーター業界は、監督官庁により、常に監視されており、事故発生のたびに原因等が明らかになります。
     そのたびに規制が厳しくなり、事故が少なくなります。
     その結果、あたかもエレベーターは安全な乗り物と誤解されています。
     しかし、地震等で停止すると、メーカー技術者が安全確認しないと復旧できません。
     それにより、安全が確保されています。
     機械は勝手に直りません。
     人間のように、時間がかかっても回復するなら便利です。
     人間も年を経ると、回復しにくくなります。(笑)

  3. いつもお読みいただきコメントありがとうございます。
    ことさらに人命にかかわる問題などと言ってコストアップのサービスを押し付けられてはいないか。個人で判断するなら買わないであろうと思うモノやサービスを、管理組合の理事長や役員の立場からは切り捨てられないと判断していないか。
    これからも、見方を変えて検証すべき事項を取り上げたいと思います。

  4.  ばかばかしく思いますが、悪法でも法なので、法定点検は避けて通れません。
     その他の監視は、遠隔監視でよく、費用節減の方法があるとは思います。
     エレベータ業界と警備業業界は、お互いに「監視」の意味が大きく、マンション管理には向いています。
     管理会社も見習わないと駄目ですよ。

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