10年間の管理委託契約に潜む罠
標準管理委託契約書に定める、契約期間半ばでの契約解除の条項(契約を解除する3カ月前に予告すれば解除できる)も見当たりません。
私も事務の合理化の一環で、単年度契約より複数年契約を支持する意見を本コラムでも述べてきましたが、10年間とは驚きです。社会情勢や管理組合の事情の変化などに合わせて、管理のやり方や業務の内容が変化することを考えると、長すぎるのも問題だと思います。
私が今まで見たことのある管理会社の最長の契約は5年です。10年とはとてつもなく長期ですね。
毎年重要事項説明書を作成し、管理業務主任者がマンションに赴いて重要事項説明を行い、その後契約締結後の書面(契約書)を作成・交付するのは、管理会社としても負担が大きいため、ある程度の長期契約は良いことだと私は思います。(重要事項説明書や契約締結後の書面の作成は管理会社負担だと考えてはいけません。管理会社が負担した費用は、管理会社は管理委託費の中から回収しているのですから、結局これらの費用は組合員が負担しているのです。)
敢えて外したことには必ず管理会社の側に意味があるはずです。
この条項を入れるのを失念したのであるなら、覚書を交わしてこれを直ちに復活させるべきです。
今後管理会社との関係がこじれたり、管理委託先の見直しを検討することとなった場合に、管理会社の罠にはまったと思い知る事態になるような気がします。
標準管理委託契約にある、3カ月前の予告で随時契約解除ができる規定は民法第651条第1項を受けて、これを具体的に成文化しているのです。(「いつでも可」と言っても明日から解除ではお互い困りますから3カ月としたのですね。)
でも一般的には基幹事務に加えて、管理員業務、清掃業務、機械警備業務、各種設備管理業務等を包含して契約しているのではないでしょうか。
基幹事務以外の契約は請負契約(所定の手順で作業を行なったり、所定の内容で仕事を完成させたりする契約)です。請負契約の場合は双方が合意しなければ契約終了までは解約できません。
今回のケースで、管理組合から中途解約を申し出た場合、管理会社が次のような主張をするのではと懸念します。
「そんな馬鹿なことはないだろう。」と訴訟に及んでも、警備会社や設備管理会社等と管理会社が取り交わした「当該マンションの○○請負契約は10年の長期契約とする。万一途中解約の場合は(例えば)契約残存期間の委託料相当額を損害賠償金として支払う。」といった損害賠償を予約した契約書を証拠として提出するかも知れませんね。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。今回のケースは「3か月前の申し出による解約条項が敢えて外されていることが問題」のようでございます。コラムは続きますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(マンション管理組合の学校)