【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その40】10年間の管理委託契約に潜む罠

元大手管理会社取締役_ブログ

10年間の管理委託契約に潜む罠

管理委託契約の期間を10年間とする契約を締結している管理会社が出てきました。
標準管理委託契約書に定める、契約期間半ばでの契約解除の条項(契約を解除する3カ月前に予告すれば解除できる)も見当たりません。

私も事務の合理化の一環で、単年度契約より複数年契約を支持する意見を本コラムでも述べてきましたが、10年間とは驚きです。社会情勢や管理組合の事情の変化などに合わせて、管理のやり方や業務の内容が変化することを考えると、長すぎるのも問題だと思います。
私が今まで見たことのある管理会社の最長の契約は5年です。10年とはとてつもなく長期ですね。

毎年重要事項説明書を作成し、管理業務主任者がマンションに赴いて重要事項説明を行い、その後契約締結後の書面(契約書)を作成・交付するのは、管理会社としても負担が大きいため、ある程度の長期契約は良いことだと私は思います。(重要事項説明書や契約締結後の書面の作成は管理会社負担だと考えてはいけません。管理会社が負担した費用は、管理会社は管理委託費の中から回収しているのですから、結局これらの費用は組合員が負担しているのです。)

 

このような合理性をもとに管理会社と協議して契約期間を10年に延長したなら何も問題ないのですが、3か月前の申し出による解約条項が敢えて外されていることが問題です。
敢えて外したことには必ず管理会社の側に意味があるはずです。
この条項を入れるのを失念したのであるなら、覚書を交わしてこれを直ちに復活させるべきです。

今後管理会社との関係がこじれたり、管理委託先の見直しを検討することとなった場合に、管理会社の罠にはまったと思い知る事態になるような気がします。 

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「民法第651条(委任の解除)

1.委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2.当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」

標準管理委託契約にある、3カ月前の予告で随時契約解除ができる規定は民法第651条第1項を受けて、これを具体的に成文化しているのです。(「いつでも可」と言っても明日から解除ではお互い困りますから3カ月としたのですね。)

 

委任契約に該当するか否かは、管理組合が管理会社に委託する内容によって異なります。会計業務、出納業務、維持修繕に関する調停といったいわゆる基幹事務(事務管理業務)だけを委託しているなら、これは委任契約(管理組合を代理して管理組合の利益のために仕事をする契約)と解せますから、いつでも相当期間(3カ月程度)の予告をもって解約できるため問題ありません。

でも一般的には基幹事務に加えて、管理員業務、清掃業務、機械警備業務、各種設備管理業務等を包含して契約しているのではないでしょうか。
基幹事務以外の契約は請負契約(所定の手順で作業を行なったり、所定の内容で仕事を完成させたりする契約)です。請負契約の場合は双方が合意しなければ契約終了までは解約できません。

今回のケースで、管理組合から中途解約を申し出た場合、管理会社が次のような主張をするのではと懸念します。

「管理組合との10年契約は、委任契約と請負契約の複合契約につき、契約半ばでの一方的な解約は承服できない。清掃会社、警備会社、各種設備管理会社とは10年の長期契約ゆえの特別の割引価格で業務を再委託している。契約期間半ばで解約すると管理会社側に違約金が生じ、損失が出る。管理員も契約終了まで勤務できる者を採用しているため、解約となれば人員余剰となり損失が生じる。仮にこの契約を、すべて委任契約だとして中途解約に応じるよう管理組合が求めるなら、管理会社に生じる損害対し、管理組合として民法651条第2項の損害賠償の用意はあるのでしょうね…」

「そんな馬鹿なことはないだろう。」と訴訟に及んでも、警備会社や設備管理会社等と管理会社が取り交わした「当該マンションの○○請負契約は10年の長期契約とする。万一途中解約の場合は(例えば)契約残存期間の委託料相当額を損害賠償金として支払う。」といった損害賠償を予約した契約書を証拠として提出するかも知れませんね。

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相手がそう出たならそれで、対抗策はいろいろありそうです。次回のコラムで、別の理不尽な管理会社の事例と本件にも共通する対応方法について述べたいと思いますので参考にしてください。

 

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その40】10年間の管理委託契約に潜む罠”

  1. いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。今回のケースは「3か月前の申し出による解約条項が敢えて外されていることが問題」のようでございます。コラムは続きますので、今後ともよろしくお願いいたします。
    (マンション管理組合の学校)

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