【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その57】管理組合資料を電子デーダで引き渡してもらおう

元大手管理会社取締役_ブログ

管理組合は事務管理業務や設備管理業務を管理会社に委託しています。

管理会社は、様々なソフトウエアを用いて、その業務を行いますが、扱うデータはすべて管理組合の資産です。しかしながら管理会社が変更となり、従来の管理会社が業務を終了する際の引継ぎは、電子データではなく紙に打ち出された資料によって行われています。

引継ぎ書類の引き渡しは従来の管理会社が発注者である管理組合に対して行い、管理組合はその引継ぎ資料を新しい管理会社に交付することとなります。
交付された資料が電子データでない場合、新しい管理会社はこの膨大な紙の資料を読み解き、次に掲げるような大量のデータ入力作業が発生するのです。

①マンション全体の情報
マンション名、所在地、専有部分の用途と区分数、敷地面積、建築面積、延べ床面積、竣工年月、分譲会社、販売会社、施工会社、設計会社等
②登記区分ごとの情報
部屋タイプ、部屋番号、専有面積、部屋別の管理費・修繕積立金・管理基金等の額、専用庭・ルーフバルコニー等の部屋固有の専用使用料の額等
③契約による専用使用部分の情報
駐車場の場所別料金、駐輪場・バイク置き場の料金等
④区分所有者の情報
部屋番号別の氏名・連絡先(通常時及び緊急時)、駐車場等使用契約の内容、管理費等の滞納履歴及び未収管理費等の内訳並びに督促履歴、役員の就任履歴等

 

更に、しっかりした管理会社であれば、建築・設備の概要、経常修繕と大規模修繕工事の履歴、竣工図面のスキャニングデータ、長期修繕計画と資金計(画像データに加えて表計算ソフトの生データが見直し作業には重要)、過去の議事録、管理規約の変更履歴といった内容まで、電子データで整理しているケースがほとんどです。

これらの膨大なデータが、管理会社が変更となる都度廃棄され、新たに管理受託する管理会社が改めて入力する愚は何とかならないものかと思います。

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修繕履歴データなどは過去にさかのぼって登録するなど大変な手間ですから、新管理会社が竣工時からさかのぼってデータ入力する等あり得ません。つまり管理組合の重要な情報が管理会社変更の度に喪失するのが悲しい現状なのです。

電子データは管理会社の管理ソフトが異なっていたとしても簡単にデータ変換できる形でやり取りすることは可能です。お互い様なのだから、これらデータのやり取りで協力し合えばいいようなものですが、管理を取ったり取られたりするライバル会社同士ではそうはいかないのでしょう。

本来は国土交通省やマンション管理業協会が音頭を取って、電子化すべきマンション管理データの

指針を示し、管理会社変更時のマンションの基本データのやり取りについての取り決めを行うことが当然と思いますが、残念ながらマンション管理業界には、そんな気配はないですね。

データ入力を繰り返す無駄な労力は管理委託料に上乗せされ、消費者が負担し続けています。そして、付随する修繕履歴等の重要なデータは失われてゆくのです。

例えば医療の世界であれば転院する場合も引継ぎや倫理に関しての取り決めがきちんとできているため、治療履歴やレントゲンのデータを引き渡さないなどありえませんね。

私は、管理会社の見直しの際や管理委託契約更新の際に、管理会社に対して、

①管理上必要なデータの電子化による整理を管理組合が要請すること
②管理会社が独自の方法(ソフト)でこの電子データ活用することを許諾すること
③管理委託契約が終了の時点で、これらのデータはペーパーに依らず電子データとして無償で管理組合を通じて次の管理会社に引き渡すこと
以上の内容を管理委託契約書に明記すべきだと考えています。

管理会社が変わるたびに全員から管理費等を引き落とすための口座引き落とし依頼書を新たに回収することも問題です。収納代行会社が同一であれば、管理組合と新・旧の会社が合意すれば提出済みの引き落し依頼書でそのまま管理費等の引き落としが可能なのです。

管理のリプレイスに際して電子データの引継ぎや口座引き落としの引継ぎに協力するか否かを、管理会社選考時の必須要件とすることが管理組合に強く望まれます。

 

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