【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その91】管理組合も業者も合意形成にお金がかかる(その2)  管理委託契約 前編

マンションの管理委託契約締結の現状

マンション管理適正化法では、管理会社と管理組合との管理委託契約の内容を変更する場合は重要事項説明書を作成し、理事長等マンションの管理者に説明しなくてはいけません。更にその変更が契約期間の延長、金額の増額、業務仕様の低減など管理組合に不利益となる内容を伴う場合は、組合員全員に対して重要事項説明書を交付し、説明会を開催する必要があるのです。重要事項の説明には国家資格の管理業務主任者が当たらなくてはなりません。

不利益となるのかならないのか、グレーゾーンも原則重要事項説明会の開催が必要とされています。例えば管理会社が毎月行っている定期清掃を隔月実施に変更して、実施不要となった清掃金額相当分を減額するとか、管理会社に一括して委託していたエレベーターの保守管理を管理組合が保守会社に直接委託し、管理会社の契約から除外するなどの場合が該当します。

管理組合としても、管理会社から契約変更の申し出があり重要事項説明を受ければ、組合員にその可否を問うため総会を開催することが求められるでしょう。

管理委託契約の改定のためには、重要事項説明会を開催した後、理事会の審議を経て総会を開催しなくてはなりません。そのたびに、契約書や重要事項説明書など膨大な資料が議案書として作成されるのです。(一義的には重要事項説明会の書面の作成費は管理会社負担、理事会や総会の資料作成費は管理組合負担となりますが、よく考えると管理会社の費用は全て管理委託料の中から支払われているので、結局のところ消費者が負担しているのです。)

マンション管理適正化法の施行により従来の自動更新契約による契約の更新は認められなくなりました。管理委託契約期間を一年間としている多くのマンションでは、仮に従来と同じ条件による契約の更新であっても、毎年契約更新のための作業が管理組合の費用で繰り返し行われているのです。

 

合意形成のためのコストをどう削減するか

トラブルの未然防止、消費者の保護のための法整備は当然必要ですが、法を守るために管理会社も管理組合も思わぬ時間と費用をかけていることを認識すべきだと思います。私は以下の方策で法令順守を前提としつつ、管理会社、管理組合双方の合意形成のためのコストを削減できるのではないかと思っています。

1.契約期間の延長
現在の主流である1年間の管理委託契約の期間を3年から5年へと長期の契約に変更するのです。マンション管理適正化法では契約を更新(締結)する場合の細かい手順を定めていますが、契約期間の上限は規定していません。10年契約だって可能なのです。

2.管理会社からの契約の解除
通常「3カ月前の予告をもって管理会社からも管理組合からも管理委託契約を解除できる」としている管理委託契約を、管理会社の側からの契約の解除は、原則契約期間中行えないとしてはどうでしょうか。(正当な理由なく管理組合が管理会社に管理委託料を支払わない場合等は例外的に管理会社から契約を終了できることとします。)つまり管理委託費の値上げは契約期間中行わないと取り決めるのです。

「管理会社の都合でどうしても契約期間中に契約を終了したい場合は、一定の解決金を管理組合に支払うことで合意解除できる又は新たな条件で契約を結びなおせる。」と取り決めておけばいいでしょう。長期契約に変更し、契約途中の料金改定はできないとなれば、長期間安定的な契約関係が担保されることになります。管理会社としては契約期間中の物価上昇リスクの負担と合意形成リスクの低減の両方を織り込んだ委託料を管理組合に提示して契約を申し出るということになります。

3.契約違反に対する対応
管理組合、管理会社それぞれが契約内容を遵守できなかった場合、解決金とは別に損害賠償の額を予約しておけば、契約違反の抑止効果が期待できます。
マンション管理業者が行う基幹事務(会計、出納、維持・修繕に関する調停)は委任契約です。委任は委任者(管理組合)、受任者(管理組合)がいつでも解除することが出来るのです。とはいえ相当の猶予期間を認めることが妥当との意味で、契約書では3カ月程度前もって予告をすると定めるのが通例です。

一方、受任者(管理会社)は委任者(管理組合)が不利益を被るタイミングで委任を終了した場合、委任者が被った損害を賠償しなければなりません。後任の管理会社候補を理事会が選定し、総会の決議を経て、新管理会社へ業務を引き継ぐとなれば、半年程度の期間を要します。解決金を支払って管理会社が契約を終了する場合でも、6カ月程度の予告期間を定めることが望まれると思います。これらの取り決めを反故にして直ちに管理委託契約を終えるような事態とならないためにも契約違反の場合の損害賠償金額をあらかじめ定めておくのです。

管理会社と締結する管理委託契約に関わる提案は「後編」に続きます。

 

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

2 thoughts to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その91】管理組合も業者も合意形成にお金がかかる(その2)  管理委託契約 前編”

  1.  今の標準管理委託契約書と重要事項説明書は、JKビジネス契約と同様の不公平なものです。
     管理会社は、契約になれていますが、管理組合には契約に明るい人物はまずおらず、不公平にも気づきません。 マンション管理業協会役員会社さえ、重要事項説明書がスカスカの管理会社があります。 これを見せられて、管理組合が気づくのは、標準管理委託契約書や標準重要事項説明書と見比べなければ気づきません。
     他にも、契約事務がありますが、管理会社が元受けの場合、元受け責任を管理会社が負うことすらなく、再委託禁止の基幹事務さえ、丸投げがあります。
     管理組合で気づいているところは、極めて少数です。

    1. コメントありがとうございます。
      管理会社には酷だろうと思えるくらいが、理想の管理委託契約なのです。この音頭を取るのはマンション管理士なのか、国なのか。はたまた業界の中で組合寄りの管理を実践する管理会社なのか。

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