- 【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その35】高層マンション火災の怖さ -
ちょっと前に話になりますが、イギリスはロンドンで起こった高層マンションの大火災。
我がマンションは大丈夫かと、ご心配の皆さんも多いことでしょう。
日本の分譲マンションではボヤ騒ぎ程度はあっても、大火災はあり得ないと私は認識していました。
長年マンションにかかわってきた私も、大きな火災の経験は皆無でした。仮に火災となっても火元の一部屋が燃えるだけで、稀にその直上階がベランダ側からの炎にあおられて被害が生じる程度の経験しかありません。
ところが最近、私の過ちに気づかされる驚くべきお話を聞きました。
なにぶん伝聞ですので、細部まで正しい情報となっているかどうかはわかりませんがそれを踏まえてお読みください。
火元は200戸を超える大型高層マンション、26階建ての2階部分。消防により1時間半で消し止められたが女性一人が亡くなられました。
お亡くなりになったのは区分所有者が賃貸に出した住戸をさらに転貸借していた人のようで、警察や消防に管理組合から問い合わせても身元すら教えてもらえないそうです。
夜間の管理室は女性のサブマネージャーが勤務しており、いったんは火元を確認するため、お部屋に立ち入ったにもかかわらず、気が動転して初期消火の対応がすぐできなかったそうです。
スプリンクラーは上層階にしか設備されていないようですし、非常放送もすぐには放送ができなかったようです。
そして、驚くべきは被害の大きさです。
不幸なことに火元住戸の扉が一部解放されたまま燃え広がったそうです。防火扉と扉の枠の間に入居者の履物が挟まっていたとかで、そのため屋内廊下とエレベーターシャフトを伝わって最上階まで全館がいぶされた状態となりました。
煙と煤で壁や天井が汚れ、火災の臭気が染みついた建物になったそうです。
この火災事故の結果、共用部分のリニューアルに要する費用は約一億円だそうです。
もちろん火災保険で担保されるのでしょうが、住民の皆様のご不自由はいかばかりかとお見舞い申し上げます。
火元住戸の復旧も、2階フロアの居住者全員がいったん仮住まいに移り、3階の床(2階の天井)のコンクリートを打ちなおす作業を行うそうです。
工期は半年もかかると聞きました。
件のロンドン高層マンション火災事故後におけるNHKのニュースで、日本のタワーマンションの約8割が消防法違反との報道がありました。
「組合員で担い手が見つからない。」は言い訳になりません。
近年は防火管理業務を専門に受託する企業も活躍しています。