A,Bが複数の部屋を共有している場合は、集会において組合員数は一人としてカウントすると、多くの法律家や専門書により解説されています。
所有者A,Bの持ち分割合が1号室も2号室も同じであれば、同一の区分所有者として1名とカウントするのが順当と理解できます。そのため、この一名と扱われた区分所有者が、Aを1号室の出席者、Bを2号室の出席者として総会に出席し、Aは議案に賛成、Bは議案に反対として、異なる議決権の行使をすることは許されないと解すべきと思います。
同様にAだけが総会に出席し、1号室としては賛成、2号室としては反対といった意思表示も無効と解すべきと思います。1名の区分所有者である限りにおいて、人格は一つであり、その判断も同じでなくてはならないからです。同様に、多くの組合員から委任状により議決権行使を託された総会の議長が、その一部を賛成に行使し、一方で残りを反対に行使することなども許されないと思います。
一方、A,B間の持ち分割合が異なる場合は別の取り扱いをすべきではと思うのです。
例えば1号室はAが9割、Bが1割を所有。2号室はAが1割、Bが9割を所有。
この場合、組合員は2名とすべきだと思うのです。建て替え決議が上程された総会において、Aは建て替えに賛成、Bは反対の考えを持ち、両者の意見をこの共有する2住戸の議決権行使で統一することが出来ないことはあると思います。共有者のメンバーは同じでも共有者の持ち分が変われば住戸ごとに議案に対する賛否の結論が異なったとしてもおかしくありません。
当然この場合は、Aが1号室の出席組合員として建て替えに賛成し、Bが2号室の出席組合員として建て替えに反対するでしょう。このことは有効と認めるべきと思うのです。共有者の持ち分割合が異なる専有部分は、共有者の顔ぶれが同じであっても人格の異なる組合員として扱い、議案に対する賛否が分かれることも認めてはどうでしょうか。
この扱いを集会の議長が認めず、組合員は1名と取り扱うとすれば、仮にその1名が1号室と2号室で賛否が異なる議決権を行使した場合、当該2部屋分の議決権行使は無効と扱わざるを得なくなるでしょう。
複数住戸を持つA,B間で、1号室と2号室の持ち分割合が異なることが原因で、集会でそれぞれの住戸が異なる意思表示を行えば、否が応でもその取扱いについて判断を下すのは集会の議長(通常は理事長)です。選択すべきは下記の①か②です。
- 組合員を2名として取り扱う。AとBが異なる議決権を行使したことがまさにキャスティングボートとなり、議案が否決又は可決される場合がある。
- 組合員を1名として取り扱う。賛否異なる議決権を行使した1号室のAと2号室のBの議決権行使をいずれも無効としたため、決議に必要な議決権数に届かない場合がある。
①②を比較し、いずれが組合員の納得のゆく民主的な議長裁定と評されるかは明らかと思います。
本コラムの冒頭部分は識者においても異論はないようですが、私の知る限りそれ以降の部分は、判例や法律書にも参考となるものは無いようです。本件を今後司法の判断にゆだねる管理組合が出てくるまでは明言できない問題かもしれません。とはいえグレーゾーンであっても集会の議長は裁定を下し議事を進めなくてはなりません。異論のある事案であったとしても、論理的かつ合理的に判断して、組合運営にプラスになると信じることは踏み込んで対処すべきと思います。
極端な例ですね。 理論上はそうで、管理規約上もそうですが、実際問題として、区分所有者の意思が異なることはあり得ず、AとB号室の区分所有者は同一で、意思も同一と考えて対処すべきでしょう。 理事長の意思と他の理事の意思が異なる場合も同様のことが起こります。
総会で、議長あての委任状を複数に数える場合です。 委任状をその通り勘定すると、議長が複数票を持つこととなり、どんな議案でも、理事長の意思通りに決定されてしまうことがあります。
この場合、議決の際、理事長は賛否を意思表示せず、賛否同数になった場合、最後の1票を投じ決定するのが良いと思います。