【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その47】駆けつけサービスや福利厚生サービスなんていらない

元大手管理会社取締役_ブログ

駆けつけサービスや、福利厚生サービスを管理組合で一括契約するマンションは多いですね。新築マンションで当初から導入されている場合もあれば、リプレイスの際に管理会社が提案する場合もあります。

 

駆けつけサービスとは、専有部内の給排水設備、電気設備、トイレ等の衛生設備などのトラブルに電話一本で駆けつけてくれ、30分程度の作業で修理ができる家具の移動や管球交換などは、その場で対応してくれるサービスです。オプションで 様々な施設(映画館、スポーツクラブ、宿泊施設等)を割引価格で利用することができる福利厚生サービスまで加入することができます。

 

基本のサービスは1世帯当たり月額300円程度から利用可能ですが、これらはすべて全戸加入が条件となっています。
私はこのようなサービスは管理組合で加入すべきでないと考えます。 

このサービスは、マンション住民からそんなにたくさんの依頼が来ない(ニーズが無い)という現実を前提として成り立っています。今まで通り、個人がいろいろな業者に家具の移動やトイレの詰まり直しを依頼したとして、その全員の支払った金額が、月額契約金額×全住戸数よりも多いわけがないから、この業者は利益を上げているのです。そして一部は無料と言いますが、所定の回数をオーバーしたり部品交換が必要となったりすれば当然費用を請求されるのです。

業者の側から見ると、実は月額料金の中で対応するサービスの依頼はさほどなく、マンション全ての住民から、様々な室内の不具合や修理等の注文の営業を、経費をかけるどころかお客から毎月数百円頂戴しながら行っていることがわかります。

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新築マンションの販売は熾烈で、「他社が導入しているサービスは、わが社も導入しないと見劣りする。」とデベロッパーは考えるようです。そのため一気に普及したこの種のサービスです。また、管理会社のリプレイスも同様に競争が激化し、他社が対応するというサービスを、「当社はできません。」と言えないものですから、大手の管理会社はほとんどすべてこの種のサービスを導入しています。

しかしながら、管理組合が専有部分のサービス費用を負担する行為は、管理組合の本来の業務ではありません。ましてや管理組合は会社ではないのですから、福利厚生的なサービスまで負担するのはどうでしょうか。管理規約上も問題ですし、何より上記のようなマヤカシの上に成り立つ商売だと思っています。

このサービスを展開する専門会社は国内に数社しかいません。管理会社の独自のサービスのように見せかけていますが、実態は専門業者に丸投げです。契約金額の何割かの手数料が管理会社に自動的に入る仕組みが出来上がっています。管理会社も管理組合の無知に付け込んでこれらのサービスを進めているのです。

 

管理会社の変更を検討する場で、このサービスをアピールしたことが決め手となって管理会社が選ばれるなど滑稽な話です。高齢化が進むマンションでは痒い所に手が届くサービスを有り難いと評価するケースもある様ですが、単なる人気投票でサービス内容を評価するのではなく、サービスの本質を見極める議論を行ってほしいものです。「他者が勧めるこの手のサービスは、当社は不要と考えます。管理費の本来の目的以外には使うべきではありません。」と勇気ある発言をする管理会社にこそ高評価を与えてほしいですね。

 

家具の移動や管球交換、トイレの詰まり直し、電気のトラブルなどそれぞれ対応してくれる近所の便利屋さん、水道工事屋さん、電気屋さん等にお願いするのは本来自己責任であるべきです。業務別に対応していただける業者を管理会社や管理組合から住民に告知・紹介しておけば済む話だと思います。
古くは有線放送の全戸加入。少し以前は健康相談の24時間電話対応サービスなどがマンションの付帯サービスとしてデベロッパーの間で流行しました。全戸加入だから割安価格で導入できると、マンションデベロッパーは様々なサービスを管理組合に押し付けて、自社のマンションの魅力をアピールしてきましたが、これらは程無くすたれてしまいました。
私はこれらの全戸押し付けサービスに対して、管理組合が独自の判断で賢い選択をされんことを願っています。

 

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