【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その98】複合用途のマンションの苦悩

一つの敷地に店舗、住宅、駐車場(公共の駐車場)が一棟の建物として建設された、複合用途の建物の組合員から相談がありました。

住宅、店舗、複合建物全体といった分別した資金管理ができておらず、収納口座と保管口座がそれぞれ一口座ずつしか開設していないことで納得できない問題が生じているそうです。これを分別して管理したいと意見を述べても管理会社からは「できない」の一言で片づけられたとか。

今期は店舗の各専有部分のための電力用電子メーターの交換、同じく給水メーターと中水道メーターの交換工事が修繕積立金を取り崩して計画されているそうです。

住宅には電力事業者の電気メーターが付いているので、管理組合で交換する必要は無いのだと思います。 店舗用給水メーターや中水メーターの交換も店舗固有の問題のようです。
住宅の給水メーターは水道局の公設メーターと思われますので、管理組合で交換の必要はありません。中水道は店舗用トイレに利用されている設備と思われます。これは通常住宅には無い設備です。

これら店舗の組合員の為の設備の修繕や維持管理に要する特別な費用を、店舗、住宅、駐車場といったすべての組合員がプールしている全体の修繕積立金から拠出するのは、何とも不合理に感じますね。

もっとも、これらにかかる費用を長期的に詳細に予測し、修繕場所別に当該用途の修繕積立金として必要額を加算して、用途の異なる組合員毎に異なる修繕積立金(異なる面積単価)を設定して積み立てることが計画されているのなら別ですが、そのような配慮はなされていないでしょう。仮にそのような配慮をするにも、長期間にわたる特段の費用を合理的に予測する等困難です。

特段の配慮が無ければ、これら店舗の組合員のための費用は、全ての組合員がそれぞれの専有部分の面積に応じて費用按分して負担することとなります。店舗だけ、やたらあれこれお金がかかる現実を目の当たりにして、何で住宅も含めて割り勘なのかと不満が出るのは当然です。

更に滑稽なことに、この一括管理の規約では、店舗固有の修繕をするか否かの決定を組合員全員の多数決で決するのだそうです。住宅の組合員が反対すれば、店舗の皆さんの必要な修繕が否決されてしまうという別の問題も生じます。

いわゆる、下駄履き住宅と呼ばれる単純な複合用途の区分所有建物(マンションの一階の一部に店舗がある等)であれば、店舗固有の建物部分や設備もないため、これらの矛盾もある程度飲み込んで、なんでもみんなで決めるという運営もありですが、大規模施設では、建物の用途ごとに当該固有の施設や設備が存在する場合が多いため、用途別に会計処理を行い、それぞれの用途毎に理事会を選任して独自の運営を行い、用途別の総会を開催することが望まれます。用途毎に、自分たちのことは自分たちで決めるようにしないと、後々の合意形成が困難になると思います。

 

 

以上の説明は、複合用途の区分所有建物に一部共用部分の定めがある事を前提としています。一部共用部分とは、規約で指定する共用部分の一部を同じく規約で指定する特定の組合員の集団(複数)が共有しているとの規定です。

例えば、住宅の一部共用部分として、住宅専用のエレベーターや住宅専用の通路を住宅の組合員だけの共有とする規定や、店舗の一部共用部分として、店舗のエスカレーターや店舗専用のエントランスホールを店舗の組合員だけの共有とする規定です。
共有する一部の組合員の建物用途は、建物の構造上店舗、住宅などの単一の用途となる場合が一般的ですが、一階の店舗と二階の事務所の共用エントランスなど用途が異なる組合員が一部共用部分を共有する場合もあります。

よって、私の今までの説明を言い換えると、一部共用部分の管理を当該一部共用部分の共有者が独自に管理するために、それぞれの一部共用部分専用の管理費、修繕積立金を設定してはどうかということです。(管理費までを分別するかどうかは建物の規模、レイアウト、管理の仕様などを考慮して総合的に判断する必要があります。)

一部共用部分の規定が規約に無い場合は、一部共用部分と規定すべき建物部分や設備を拾い出して、規約で、全体の共用部分からこれらを一部共用部分として切り離す規定を先ず整え、同時にそれらを管理するための専用の管理費と修繕積立金を創設することになります。
管理会社から出来ないと言われたからと諦めるのではなく、規約を改定する意義を組合員全員で共有し、出来るための規約改定へ向け行動する必要があると考えます。

マンション管理会社の役員という立場を離れてこの業界を眺めると、大企業の系列管理会社であっても決して管理組合にあからさまに語ることのできない、裏の一面を各社隠し持っていることがわかります。匿名だからこそ本音で、時にはきわどい発言も続けてゆき、マンション管理組合の運営がより実りあるものにできたらと思います。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その98】複合用途のマンションの苦悩”

  1.  正にその通りで、複合用途のマンションは、標準管理規約の複合用途型を参考にしても、管理規約作成は困難です。 
     管理会社も、どれだけ複合用途型マンションを管理しているか知りませんが、今までの問題例を参考にすることができないのでしょうか?
     もっとも、できる事も「できないと即答」するのは、管理会社の悪い癖ですから、仕方がありません。

     大阪では、今、複合用途型タワーマンションが建設中です。
     どんな原始管理規約になるか楽しみです。

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